【コラム・佐々木哲美】思い起こせば、認定NPO法人「宍塚の自然と歴史の会」の里山保全活動は太陽光発電設備業者に好きなようにやられてきました。たった一つの成功例は、2年前、約2.7ヘクタールの事業が計画されている情報をいち早くつかみ、止めさせた事例です。その土地は5名の方が所有し、1名は断固として応じなかったのですが、2名は承諾し、揺れ動く2名を会が説得したことにより、開発業者は諦めて撤退しました。

ところが、今年1月中旬、突然、森林の伐採が始まりました。数日後に看板が立てられ、太陽光発電設備と判明しました。今回の開発計画は、先に計画された1画で5004平方メートルです。登記簿を調べてみたら、つくば市に住む所有者から太陽光発電業者に転売されていました。しかも、千葉銀行から1億4500万円の抵当権が設定され、融資されています。

土浦市に確認したところ、「土浦市太陽光発電設備の適正な設置に関する条例」に基づく設置届が事業者から出されたということでした。

市は詳細を明らかにしませんでしたが、いくつか条例違反があることは明らかです。条例によると、看板は太陽光発電設備事業に着手する60日前に設置するとなっていますが、着手後に設置されました。また、近隣関係者に対する説明報告書を提出すると定められていますが、隣接地主は説明を受けていませんでした。明らかに条例違反ですが、中止させることはできないという見解です。

巨大な里山環境破壊システム

そこで、千葉銀に「太陽光発電施設への融資に関する質問状」と題して、これまでの経緯と宍塚里山の重要性の説明、下記の3つの質問事項を送りました。

①貴行の融資決定基準で「生物多様性の保全に積極的に取り組むこと」は具体的にどのように位置づけられているのか?

②生物多様性に富む森林を伐採し太陽光発電所を建設する事業に対し融資をすることについて、どのような見解を有しているか?

③融資した事業が条例を順守しない場合、どのように対処されるのか?

千葉銀からは回答拒否の連絡がありました。千葉銀は、「環境保全」をマテリアリティ(重要課題)と位置づけ、「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)フォーラムへの参画」を2023年2月21日に表明し、生物多様性の保全に積極的に取り組むことを宣言しています。図らずも、言行不一致を露呈しました。

里山を組織的に破壊するシステムが動いていきます。▽土地を持て余している地主▽小遣い銭欲しさの情報を集める係▽資金がなくても開発できる業者▽評価額が数十万円の土地に数億円を融資する銀行▽建設に大した許認可や技術も要らない業者▽発電した電力を確実に購入してくれる国の政策―です。加えて、▽役に立たない条例▽無関心な市民の存在―もあります。

残念ながら、今のところ我々にできることは限られていますが、里山を組織的に破壊するシステムのどこかを分断することが必要です。(宍塚の自然と歴史の会 顧問)