【コラム・川浪せつ子】今回は3月に閉店してしまった「珈琲俱楽部なかやま」さんです。なくなったお店の絵を掲載するのは初めてです。絵を見て行きたくなられた方、すみません。いつ開店したのか正確にはわかりませんが、たぶん40数年前。まず土浦に新店舗を構え、その後そのお店を閉め、35年前、先日閉店した本店(つくば市古来)を開いたようです。

私が初めて「なかやま」さんに行ったのは、本店ではなく、友朋堂書店の斜め前にあったお店(つくば市吾妻)でした。このときの感動は忘れません。あまりにもオシャレだったからです。そのときは保育所に子供を預けた後の時間。若い私にとってコーヒー500円はとても高く、その後は一回も行けませんでした。

その後、西武百貨店(クレオ)の斜め前に、新しいお店が出来ました。そのときも、まだ子育てに手間とお金がかかるころ。お茶するのなら、隣のハンバーガーショップでよいと思っていました。ある日、年上の絵のお友だちが「ここに入りましょ」と誘ってくださったとき、私のちょっと渋った様子を見て、「私がごちそうするから!」

そして、優雅で素晴らしい空間を初めて体験して、いつかきっと私も自分のお金でここにランチに来ようと思いました。

私とお店のストーリーが同時進行

時が過ぎ、私は「なかやま」さんでランチし、スィーツを食べ、たくさんの絵を描かせていただきました。店内のギャラリーコーナーで、展示会も数回開催させていただきました。ですが、西武がなくなった後、ここも閉店されました。古来の本店だけになってからは、我が家から少し距離があるため、あまりお伺いできなくなり、閉店を知ったときはショックでした。

初めコーヒーの値段に躊躇(ちゅうちょ)したことが、今思えばおばかさんだったなぁ、と。コーヒーの値段は、フラワーコーディネート、いろいろな調度品、そんな空間を大切に慈しみ、心が満たされる空間を演出するお値段だったのだ、と。

書きたいことはたくさんあり、全部はお話しできません。私自身のストーリーはお店と同時進行していました。あの時間が私の生きてきた道とリンクしていたと、「なかやま」さんの閉店で思い出されます。感謝です。お店を守ってきた方、まだ行き先が決まっていないとか。どうかステキな道を見つけられますように。

「なかやま」さんで修業された方が、今は自分のお店を持たれています。志は永遠に。古民家カフェ「ポステン」(つくば市北条)と炭火焙煎珈琲「ぬまもと」(牛久市さくら台)です。(イラストレーター)