【コラム・中尾隆友】私の持論は「地方経済にとって有望な成長産業は、農業・観光・医療の3つの分野である」ということだ。

産業育成に欠かせない「相乗効果」の視点

実は、この3つの産業は密接にリンクしている。たとえば、海外の富裕層や中間層に、日本への観光をかねて、先端的な医療あるいは人間ドックを受けに来てもらう。そして、湯治などを含めた観光では、ご当地のおいしい日本食を楽しんでもらう。

それができれば、帰国した後も、安全で品質の高い日本の農産物を食べてもらえる機会が増えるだろう。ひとたび日本のファンになってもらえれば、その後もたびたび日本を訪れてもらうことができるかもしれない。

こういった日本の強みを生かせる産業の組み合わせこそが、農業・観光・医療の高付加価値をさらに高め、日本ブランドを確立すること、ひいてはそれが地方経済の発展につながる。そうなれば、中国や韓国、台湾などアジアのライバルたちとの価格競争にも巻き込まれることはなく、賃金水準が比較的高い新たな雇用をつくりだすことができるのだ。

特に茨城県は農業に強く、医療水準が高い大病院が多い。しっかり整備をすれば、モノになる観光資源も少なくない。ポテンシャルは高いはずだ。

「点」ではなく「面」で考える重要性

しかし現状では、農業と医療は国の規制でがんじがらめになっているし、観光は国の経済規模でみると、諸外国に比べて圧倒的に予算が少ないというハンデを背負っている。

茨城県の2023年度の一般会計では、PRによる観光振興や農産物のブランド化など、少ないながら予算が配分されているものの、それよりも予算の硬直化が否めないのは非常に残念に思う。

これは、国と地方自治体が抱える共通の問題点だ。かつて行政に身を置いたからよく分かるのだが、予算を農業という「点」、観光という「点」でしか考えず、相乗効果をもたらす「面」で配分できない仕組み(あるいは慣習)なのだ。

私は「これら3つの分野を10年かけて成長産業に育てることが望ましい」と言い続けてきたが、すでに言い始めてから15年が経ってしまった。地方の活性化を本気で考えるならば、このような閉塞(へいそく)した予算を早く打ち破ってもらいたいところだ。(経営アドバイザー)