【コラム・先﨑千尋】全国のさつまいも産地や専門店が一堂に会する「さつまいも博」が、埼玉県さいたま市の「さいたまスーパーアリーナ」で先週開かれた。私はひたちなか市の干し芋生産農家の人たちと24日に行ってきた。22~26日の会期中に5万人が集まったという。この「さつまいも博」は、同実行委員会がさつまいもの多彩な味わい方やトレンドを発信しようと2020年に始め、今年は3回目。

同博名誉実行委員長の山川理さんは「さつまいも博は、さつまいもの優れた点を社会にアピールし、生産者と加工業者、消費者との絆を深めることが目的。ロシアのウクライナ侵攻は、肥料やエネルギー資源の世界的な不足を引き起こしている。この影響は農業にも及び、資材の高騰など経営の圧迫につながっている。さつまいもは最低限の肥料や農薬、農業資材で生産され、食料危機を回避できる大切な食べ物だ」とメッセージを寄せている。

会場には、地元埼玉のほか、沖縄や宮崎、神戸、京都、新潟などの焼き芋・スイーツ専門店など26店が、自慢のさつまいも製品を出品。そのほか、鉾田市やなめがたしおさい農協なども出店していた。けやき広場に設けられた会場の各ブースには、焼き芋や干し芋のほか、さつまいもを使ったアイス、プリン、ポタージュ、サンドイッチ、豚汁など約200種類のメニューが並んだ。生イモを買えるコーナーもあった。

同博の目玉は、ナンバーワンの焼き芋を来場者の投票などで決める「全国やきいもグランプリ」。参加した焼き芋店から自分の好きな焼き芋を購入。食べ比べをして、うまいと思った店に投票する。

ひたちなか市は業者も農協も不参加

各店自慢の焼き芋は、イモの種類や焼き方などで味や食感が異なる。熟成、つぼ焼き、塩味、超密、オリーブ焼き芋など、セールスポイントはさまざまだ。芋の種類も、人気が高い紅はるかやシルクスイート、安納芋など、「ほくほく系」と「しっとり系」があり、熟成期間や焼き方に工夫をこらしている。本県からは、行方市の「なめがたファーマーズヴィレッジ」と東海村の「㈱照沼」がエントリーしていた。

同博は入場時間に制限があり、2時間が限度だ。時間で区切って来場者を入れている。時間前から行列ができ、若い男女がほとんど。私たちのような高齢者は少なかった。私たちは同博から「いもの町」川越市に回ったが、こちらも、平日にもかかわらず、すごい人波に驚いた。若い人の着物姿も多かった。駐車場はどこもいっぱい。店もにぎわっている。私が住んでいる那珂市の近くの神社の祭りでも、これだけの人は出ない。

今回同博に行って気づいたのは、日本一の干し芋産地であるひたちなか市からは、業者も農協も行政も参加していないということだった。

さつまいもや干し芋は、健康食品、自然食品としてブームが続いており、農産物として人気が高い。これだけ人が集まるイベントに関心を持たない最大の干し芋産地。それはどうしてなのだろうか。そんな所に出なくとも、売れているからいいということなのだろうか。もったいないではないか。同行の人たちと車中でそう話しながら帰ってきた。(元瓜連町長)