【コラム・古家晴美】今回は、「アグリコ桜楽農園」を運営しているJAつくば市(本店・つくば市東岡)営農部営農企画課の清水祐記課長(49)と農園担当の塚田晴樹さん(23)にお話を伺った。同農園はつくば市内の貸農園としては古株で、約30年の歴史を持つ。市民農園整備促進法の施行(1990年)を受け、合併してできた現JAの前の旧桜農協が設立した。

1区画20平方メートルの耕地を馬蹄(ばてい)型に配置し、境界にレンガを埋めるというおしゃれな空間を演出している。空いた土地には、当初はオーナー制の果樹を植え、そば打ちや餅つき、イチジクのジャム作り、ラベンダースティック作りなどのイベントを、毎月、参加費無料で開催していた。

調理台が付いた談話室、農具の貸し出し、トイレ設備などがそろった共用棟、たい肥・水・マルチの無料提供もあり、施設の充実度は高い。

利用者は農業初心者がほとんどで、学園都市以外にも、土浦や都内からも集まって来た。東京都文京区から毎週リュックを背負って通っていた年配の女性は、開設当時からつい最近まで利用していたという。書面上の契約者は男女比7:3だが、夫婦で来る家庭、契約者は夫だが妻が中心に農作業をする家庭、夫が出勤前に水やりに来る家庭と多様で、実質的な男女比は5:5とのこと。外国籍の方も1割いる。40~50代が多いという。

研究学園都市というやや特殊な環境で、全国から集まって来た見ず知らずの様々な人々が、ここで土を介して交流している。

現在はキャンセル待ち16人

この30年間、農園の運営は順風満帆というわけではなかった。開設して15年くらいは、充足率10割をキープしていたが、10年前には6割程度に減少してしまった。開設当初の利用者が高齢化して脱退したこと、市の補助金が止まり、無料のイベントが開催できなくなったことなど、いくつかの要因が重なった。

そこで、利用料金値下げという一大改革に乗り出した。その甲斐(かい)あって、現在ではキャンセル待ち16人という盛況ぶりだ。特に、コロナ禍以降は、外で体を動かしたいという希望者がおり、増加傾向にあるという。

このような地道な努力のもと、JAは自らの存在のPRも怠らない。直売所もライスセンターも協同病院も、みなJA経営であることを初めて知る利用者もいる。JAの活動を地元の方々に理解してもらう場にもなっている。(筑波学院大学教授)