【コラム・坂本栄】2月下旬、国際経済の最終講義をした。本当は1月だったのだが、ひどい風邪で休講せざるを得ず、補講をセットしてもらった。私は半期15回の最後の講義を「終論」と呼んでいる。それまでは基本的な知識を学んでもらい、最終回では「考え方のベース」になるようなことを話すように心掛けている。

たまたま、最終回は株価が急騰急落している時期にぶつかった。そこで「皆さんが将来おカネを貯め、金融資産を持つようになったときの参考に」と、ポートフォリオ(金融投資の組み合わせ)を重点的に取り上げた。

この考え方については、各論の「株式・債券・商品などの金融商品」で話している。ポイントは①リスク回避のために複数の金融商品に分散して投資する②つまり、預貯金、内外債券、内外株式、外貨などに分け、特定品の暴落による大損失を回避する―など。

終論ではその回の記憶を呼び起こしてもらい、1投資対象がゼロになっても、全体の20~25%を失う程度の割合にしておいた方がよいと話した。「リスクを避けていたのではおカネ儲けはできないが…」と念を押しながら。

リスクをどう見るか

終論では、株価の急騰急落、米金融緩和の終焉、円高傾向の外為など、リスクの事例を説明したあと、話をエネルギーミックス(電源構成)にシフトさせた。「皆さんが毎日使っている電気のつくり方、つまり発電方法も分散しておかないと、想定外のことが起きたとき、経済がリスクにさらされる」と。

電源構成については各論の「石油・石炭・天然ガスの開発」の中で話している。その際のレジメには、原子力20~22%、太陽光や風力など再生可能エネルギー22~24%、液化天然ガス(LNG)火力27%、石炭火力26%、石油火力3%―といった配分が政府の2030年目標と記載。終論では「原発は今ゼロに近いが、政府の発電ポートフォリオでは4本柱の1つ」と補足した。

これらはいずれもリスクをはらんでいる。大津波で非常冷却装置がやられた福島原発は言うまでもない。輸入に依存するLNGや石油も、シーレーンの途絶、産出国の混乱などで輸入できなくなる事態も想定される。

「富士山の噴火や曇天が続く異常気象が到来した場合、太陽光は当てにできない」「大地震で風車が倒れることを想定すると、風力にもリスクがある」「リスキーだが環境対策で優れ、燃料面で安定している原発をポートフォリオに加えることは、逆張り投資としては面白い」とも指摘しておいた。

学生には頭の体操をしてもらえたかどうか。おカネとデンキという生活の大きな要素を掘り下げ、あれこれ冷静に考えてもらえればと思っている。(大学兼任講師)