【コラム・山口絹記】バーチャルフォトグラフィーという単語を聞いたことはあるだろうか。

最近のゲーム、例えばソニーのプレイステーション5やマイクロソフトのXbox(エックスボックス)などの家庭用ゲーム機、ハイスペックPCで遊べるようなゲームを普段からプレイしている方々の中ではもはや当然になりつつあるのだが、今のゲームのグラフィックというのは本当にすごいことになっている。知らない人が見たら、ゲームの画面だとは信じられないレベルになっていると言ってもよいだろう。

今コラムの写真は著作権的な都合で現実世界の写真を載せているが、これくらいの景色がどこまでも広がっている世界を自由に動き回れると思っていただいて差し支えない。

そんなすさまじいグラフィックの世界を歩き回って遊べるゲームが数多くある中で、このゲームの画面を写真として記録する活動が少しずつではあるが広まっている。

少しゲームやPCに詳しい方には、「それってつまりスクリーンショット(キャプチャ)でしょ?」と言われてしまいそうだ。もちろん最終的にはスクリーンショットに違いないのだが、このスクリーンショットを記録する前段階で、目の前の情景をより思い通りに撮影するための機能が最近の多くのゲームに実装されている。

思いもよらない世界が広がる

この機能は「フォトモード」と呼ばれることが多いのだが、実際のカメラやレンズにある概念や機能、焦点距離や絞りはもちろん、ゲームによっては複数の照明装置(ライティング)、色収差やノイズを調整できるものまである。つまり、ゲームの中に本格的な機材を持ち込んで撮影ができるのだ。

加えて、現実ではいじることのできない天候や時間を操作したり、現実ではありえないアングルから自由な撮影も可能であることが多い。

これはどういうことかと言うと、プレイヤーそれぞれの感性をかなりの自由度の中で写真として表現できるということだ。ここまでくると、もはやひとつのアートだし、ゲームの中の一機能にとどまらない独立した文化になっていく(なっている?)のだと思っている。スクリーンショットではなく、あえてフォトグラフィーと呼ぶのはこういった現状を踏まえているのだ。

SNS、特にTwitter(ツイッター)などでは、かなりの頻度でコンテストなどのイベントや、バーチャル空間での展示会なども開催されている。興味のある方は是非、「バーチャルフォトグラフィー」という単語でネット検索をしてみてほしい。そこには思いもよらない世界が広がっているはずだ。(言語研究者)