【コラム・高橋恵一】旧統一教会の被害者救済や新たな被害者の発生防止策が国会で検討されているが、なかなか進展しない。合同結婚式や霊感商法が顕在化し、オウム真理教の地下鉄サリン事件でカルト集団の異常さと不気味さが課題になって、旧統一教会に対しても規制の動きがあったが、メディアの報道も減って立ち消えになっていた。

7月8日、参議院選挙の最中に安倍元首相が街頭演説会場で銃殺されるに至って、政治家と旧統一教会との関連が浮上し、改めて信者の異常な高額寄付などによる被害、信者の家庭崩壊などが、長期間続いていることが明らかになった。

旧統一教会は、本部のある韓国ではビジネス集団としての性格が強く、膨大な資金を背景に、韓国国内だけでなく、北朝鮮や米国、南米の諸国で、多様なビジネスを展開している。その資金や赤字の補填(ほてん)は、日本の高齢者や女性の献金などで集められ、韓国の教団本部に送られる年間数千億円が充てられているという。

旧統一教会のスタンスは、過去の日本が朝鮮半島を植民地支配した、日本人は先祖の罪を償(あがな)うために韓国に金銭を提供しなければならない―というもので、その具体化が霊感商法や献金・寄付などだ。結果、マインドコントロールされた信者やその家族が生活破綻するほどになり、教団の意向によって成立した信者同士の夫婦や子供にも、人権問題が生じている恐れもある。

政治家の自浄作用には期待できない

政治家と旧統一教会の関係が調査され、教団イベントへの出席や祝意の提供などとともに、選挙への強力な支援が見えてきた。平成12年(2000)以降の国政選挙では、教団の強力な支援で当選した議員もあり、教団の選挙支援を差配していたのは、元首相という証言が多数報道されている。

旧統一教会は、霊感商法などの批判から逃れるため、教団の名称変更を文部科学大臣に申請したが、当初は認可されなかった。名称変更が認可されたのは、第2次安倍内閣になってからである。同性婚や選択的夫婦別姓など、多様性を認める地方議会でも慎重論が通ってしまう。旧統一教会の主張する方向が、政治の場に表れている。

最近も、貧困や、家庭内でのDV被害などから子供を守るための「こども庁」の設置が、いつの間にか、「こども家庭庁」になっている。

教団は、宗教法人格の取り消しや集金活動の制限を恐れて、政権与党と強く結びついたのであろう。つまるところ、金集め集団にとって、教団を擁護し、収奪活動への制限をさせない役割を政治家に求め、政治家は、無償で強力な選挙応援をしてくれる教団を必要とした。この関係を断たない限り、被害者の救済も防止も成り立たない。

しかし、元首相など、問題の中核にある政治家との関係の調査が拒否されている。不当な金集め教団、いわば反社会団体の選挙支援活動に期待している政治家は、宗教法人の取り消しや被害者救済に消極的だ。

政治家の自浄作用に期待はできない。この状況で出番はメディアである。政治家の、忘れた、記憶にない、知らなかったなどという説明を信用している国民は、ほぼゼロであろう。うそとわかっていながら、追及できないメディアであってはならない。(地図好きの土浦人)