【コラム・入沢弘子】「シベリア」がずっと気になっていました。ジブリ映画『風立ちぬ』で登場して、印象的だったからです。

映画の中の「シベリア」は竹皮と新聞紙に包まれた、黒い具材を挟んだ三角サンドのようなもの。映画は1920年代の激動の渦中にある日本を舞台に、航空技術者・堀越二郎の半生を主題にしたものですが、西洋の影響を受けた文化の描かれ方が、ノスタルジーを感じさせるものです。「シベリア」は今も売られていると知り、ポタリング散歩で買いに行くことにしました。

出発地点は、今年7月にリニューアルした「りんりんロード」虫掛休憩所。18台分の駐車場、テーブル付きベンチ、新しいトイレの壁面には空気入れも設置。トランクから出した愛車「BROMOTON」(ブロンプトン)を組み立てるスペースも広くて安心です。

初めて食べるのに懐かしい味

さあ「シベリア」目指してスタート!

枯葉色に変化しつつあるハスの葉、黄金色の稲穂、青々としたひこばえ、白く広がるソバの花、色づき始めた桜の葉。秋色のグラデーションを楽しみながら行くと、武者塚古墳の標識。石室から古墳時代の人の結った頭髪・みずらが、日本で唯一、形を保ったまま発掘されたそうです。石室の展示施設があるそうなので、帰りに寄ってみましょう。

「かきぬま」のシベリア

筑波山が宝篋山(ほうきょうさん)に隠れた頃に藤沢休憩所。少し先を右手に曲がり一般道へ。高岡根の標識からは緩やかな上り坂。信号を渡ると、右手に菓子処「かきぬま」があります。「シベリア」は掌(てのひら)の半分ほどの大きさですが、ずっしりとした重み。映画で観たものと同じ形状です。

道路を土浦方面に少し戻り、新治ふるさとの森に入ります。公園内には「ひたちふじさわ」の駅名標が建っていました。土浦方面には「さかた」、筑波山方面には「たとべ」の印字。旧筑波鉄道の駅から移築したのでしょうか。

ベンチに座っておやつタイム。水ようかんが挟まれ、しっとりしたカステラ生地の「シベリア」は、初めて食べるのに懐かしい味がしました。(広報コンサルタント)