【コラム・古家晴美】台風が上陸するかもしれない、という天気予報を尻目に、曇天の中、つくば市在住のインド人女性、カッパム・ビーディル・サジナさんご一家の菜園を訪ねた。4月に続き、2回目の訪問だ。今年は猛暑と大雨の異常気象もあってか、サジナさんの菜園の野菜は、昨年ほど豊作ではなかったと言う。

1メートル以上の長さになるsnake gourd(へび瓜)は、昨年、近くのスーパーで苗を購入して育て、たくさん収穫して食べたが、今年はうまく育たなかった。菜園仲間(先輩)の日本人のおばあさんに昨年、分けてあげた種を逆にもらい、それで再度、挑戦している。失敗しても、このような種返しをしてもらえるのは、菜園ネットワークの強みだ。

日本人にとっては珍しいへび瓜だが、ダール(レンズ豆のカレー)に入れてチャパティやロティと食べたり、ターメリック(うこん)と塩の味つけスープに入れて、ご飯と一緒に食べる。

白ゴーヤも昨年はたくさん食べたが、今年はあまりできなかった。しかし、昨年、大量に乾燥させたので、今年になってもそれは食べられる。塩とターメリックをまぶして日干しにしておく。そのまま食べてもよいし、炒めてもよい。白ゴーヤは緑のゴーヤよりも苦みが少ない。

トマトも、芽キャベツ、ケール、サフラン、ほうれん草も、場所を替えて何回も植えたが、ダメだった。

逆に、今年豊作だったのは、キュウリとベリー類だ。キュウリはピクルスにして保存した。同じものが続くと、飽きてしまうので、保存食や冷凍・乾燥するなどして、工夫している。ラズベリー、グーズベリー、いちごも、今回はカゴいっぱいにできて、畑でそのまま食べるのが最高においしい。

日本人では思いもつかぬ活用法

秋になって、里芋ができるのを楽しみにしている。ゆでてから、そのまま食べるか、少しつぶしてヨーグルトと少量のクミンを混ぜて食べる。

あるいは、ゆでたものを賽(さい)の目に切って、black mustard(クロガラシ:辛くない。これを入れると味が劇的に変わりおいしくなる、とのこと)と、カレーリーフを入れ、ココナッツオイルで、塩味で炒める。これは辛くないので、子どももよく食べる。日本のゴマあえなどの副菜に相当するらしい。

また、今年はターメリックを植えた。成功するかどうかわからないが、葉っぱが枯れたころに根を引き抜き、すりおろす。料理には使用せず、ペースト状にしてから肌にパックしようと考えている。乾燥肌の修復に効果があり、保湿性を高めると言う。

今夏の畑仕事は、必ずしもうまくいったとはいえなかったが、周囲の方々に支えられながら、再度、挑戦したいと張り切っているサジナさん。畑の収穫物である里芋を炒めたり、ターメリックをパックにしたりと、日本人では思いもつかぬ活用法は、インドの食文化、生活習慣を反映している。(筑波学院大学教授)