【コラム・奥井登美子】古い引き出しの中から、「悪疫除けひとつとや節」「明治12年7月9日虎列刺(コレラ)病予防商議として出縣申付候事 茨城縣」の2枚の紙が一緒に出てきた。

明治12年に茨城県にコレラ病が流行して、その時に皆が口ずさんだ「ひとつとや節」なのかも知れない。読めない字ばかり、ギクシャクしながら、何とか読んでみると、143年前なのに、今のコロナにも当てはまる部分がチラチラ。

そのころの日本人は流行病も唄にしてしまっていたのだ。テレビで、コロナの「ウイルス除けひとつとや節」をやれば、面白いに…。

悪疫除けひとつとや節(作者 清水近前人)

1つとや ひとをそこねるコレラ病 撲滅(ぼくめつ)させるはじん力ぞ

2つとや ふだん注意を怠るな 喰物(くいもの)衣類を清潔に

3つとや 三つのつとめは衣食住 貧富ほどよく衛生に

4つとや 酔って夜更かし呑喰(のみくい)を するのは病のもととなる

5つとや いつも気をつけ下水場を 綺麗(きれい)にするのは身の為(ため)ぞ

6つとや むやみな運動それは毒 運動せぬのも又(また)毒だ

7つとや なんでも病をよけるのは 空気の通りをあたらしく

8つとや やたら揉手(もみて)に神仏を 頼まずお医者に訳をきけ

9つとや ここもかしこもコレラ お巡りさん方ご厄介

10つとや とうとうコレラも行政の 力で撲滅お目出たや

(随筆家、薬剤師)