【コラム・浅井和幸】人(Bさん)との行き違いで傷つき、相談に来られる方(Aさん)がいます。Aさんは、Bさんのこれまでの言動の説明をして、「こんなひどいことが人としてできるはずがない。どうしてBさんは、こんなことをするのか?」という質問をします。

無知で世間知らずの私は、「Bさんの行動理由で考えられるのは、〇〇と〇〇。環境的にこのようなことがあるとか、Aさんとのコミュニケーションのパターンから、〇〇も考えられますね」と、想像できるBさんの言動の理由をお伝えします。

Aさんと私の関係性がそれほどではない場合、こういったBさんが取る行動の理由の説明について、かなり高い確率で、Aさんは憤慨されます。「悪いやつ」に行動理由などはなく、悪い人間だから、ひどいことができるというのが、一般的な考え方です。こういった説明をすると、「理由があれば悪いことをしてもよいのか」と思ってしまうものです。

「悪い人間の気持ちなんて理解したくない」という言葉に、違和感を覚える人は少ないでしょう。理解すべきは「良い人間」の気持ちであって、「悪い人間」の気持ちなど理解してはいけないと考える人も多くいるはずです。敵と思われる人の理由なんて知りたくないもので、必要なのは「良い人間である自分」を受け入れてくれる人となります。

問題解決は、解決していない今の所とは別の所に行くことです。別の所に行くことは、また、別のストレスがあるかもしれないという不安が生じます。実際に、今よりも良い所に移ることはストレスになるものです(うれしいと感じていても、昇進やマイホーム購入も大きなストレスになります)。

苦しく、余裕がないときは、自分自身が動くのではなく、「悪いもの」を除くことを、意識的、無意識的に考えます。もっと緊急性を感じるときは、その場から逃げる可能性も増えますが、「いっぱいいっぱい」で、自分の変化は受け入れられないし、今持っているものも手放したくないというのは当たり前の感覚ですよね。

疑問を解決したいのか、同意を求めているのか

さて、冒頭の「どうして、ひどいことができるのか?」ですが、この言葉だけを見れば、これは明らかに質問です。しかし、この質問の目的が疑問の解決なのか、同意を求めているのかで、対応を変える必要があります。

しかも、この質問は無意識で、Aさん自身も自覚がない場合もあります。なので、Aさん自身が、相手の行動理由を知りたいと意識していても、無意識で知りたくないと葛藤状態のときは、不用意に回答してしまうと、Aさんをより孤独の状況に追い詰めてしまうので、要注意です。

ストレスが大きすぎる場合は、固まった状態で心身の回復が必要です。今まで「Aさんにとって最適、最高の言動をとってきた」ことと、「とりあえずは問題解決をしない」ことを支援者は頭の片隅に入れておく必要があるでしょう。Aさんに余裕が出てきたら、別の方法を試してみるぐらいの気持ちで、解決策を探る余裕が支援者には求められます。(精神保健福祉士)