【コラム・古家晴美】時折、畑で裸足(はだし)になる。春にはイキイキとした土の生命力を感じ、夏には熱気を帯びた土の荒々しさ、秋にはそれが落ち着いた感じが足からじかに伝わってくる、と語る小島幹男さん(76)。本格的に野菜づくりを始めたのは、教員を定年退職してからのことだった。健康のために体を動かしたい、耕作放棄したら雑草が生い茂り近所に迷惑をかけるのではないか、という思いからだった。

筑波山麓の農村地帯に代々住んでいる。子供の頃は、田んぼを1町5反歩(約1.5ヘクタール)、畑を6反歩(約60アール)所有し、その半分は家族で耕作していた。畑では、自給用の麦や野菜を栽培したという。残りは人を雇ったり、住み込みのお手伝いの女性の手を借りた。現在、自家用の畑は当時の半分の3反歩(約30アール)になったが、それでも7人家族では、食べきれないほどの大量の野菜が収穫される。

幹男さんのこだわりは、極力、農薬を使わないことだ。アブラムシが付くと枯れてしまうそら豆以外は、作物に穴が空いても、薬は使わない。また、様々な品種の野菜や、人があまり作っていないゴマ、昔懐かしい金マクワなどを作るのも楽しみだ。

今の時期、アスパラガス、ピーマン、シシトウ、万願寺とうがらし、ナス、トマト、キュウリ、ズッキーニ、ゴマ、スイカ、ヤマトイモ、春菊、ドジョウインゲン、ネギ、ショウガ、プリンスメロン、小豆、とら豆、ゴボウ、はぐら瓜、オクラ、落花生、トウモロコシ、花豆、黒豆、里芋、さつまいも、かぼちゃ、キクイモ、金マクワに、梅、柿、栗、ブルーベリーと、約30種に及ぶ野菜やくだものが畑に植えられている。

セットにして親戚・知人・友人に配る

これに、ピーマンならば緑・赤・黄、ナスは水なす・米ナス、トマトは赤と黄のミニトマトに中玉の2種類、緑色と黄色のズッキーニ、スイカは赤・黒(赤)・黄・小玉、かぼちゃは大ぶりのかぼちゃの他に小さなかぼちゃ―など、多品種を栽培している。特にじゃがいもは、店頭に並ぶもの以外に、皮も中身も赤いもの、皮が黒く中身が紫色のもの、皮は赤いが中身がオレンジ色のものなど5種類作り、セットにして親戚や知人、友人に配る。

配って評判がよかった品種を、翌年の作付けに反映させることもある。まさに「菜園の輪」が出来上がっている。畑仕事について、家庭菜園入門書には載っていないプロのコツを教えてくれたのは、隣の畑のおじいさんだった。畑で10時に共にお茶を飲みながら、色々な知識を得てきた。

耕作放棄地問題が取り沙汰されて久しい。特に、今の時期、雑草と格闘しながら、日々、田畑を管理するのは、重労働だ。しかし、土を通した四季の移ろい、多くの人とのつながり、新たな野菜との出会いなど、菜園は様々な輪をもたらしてくれるのではなかろうか。(筑波学院大学教授)