【コラム・片山秀策】地球温暖化対策として、二酸化炭素(CO₂)を発生する化石エネルギーから、太陽光や風力など再生可能な自然エネルギーに転換しようとする動きがあります。再生可能エネを利用する動きは、1970年代のオイルショックの後から始まっていますが、日本ではなかなか代替が進んでいませんでした。

ところが、2011年の福島第1原発事故の後、再生可能エネ利用を推し進める再エネ特措法による固定価格買い取り制度(FIT)で弾みがつき、あちこちで太陽光発電の建設が進んでいます。問題は、太陽光発電所は大きな面積が必要となるため、耕作放棄地や未利用地が使われるようになっていることです。

未利用の土地といっても、工場や住宅に使われていないだけで、大気中のCO₂を吸収する樹木が生育していて、多様な生物が生息する場所です。

樹木は10年単位で光合成により大気中のCO₂を固定しています。その樹木を大量伐採して、耐用年数が20年程度の太陽光発電所が建設されています。土浦市内にある大規模太陽光発電所を例に挙げると、約26ヘクタールの平地林を伐採して建設されました。もともとそこにあった林が何十年もかけて固定したCO₂は、燃やされたり廃棄されたりします。

再生可能エネの一つ、太陽光発電施設を造るために、大気中のCO₂を固定する森を破壊することは、本末転倒というか、大きな矛盾をはらみます。

1ヘクタール以上の太陽光発電所の設置は都道府県知事の許可、1ヘクタール未満の場合は市町村長の許可がそれぞれ必要ですが、発電量が50キロワット未満の小規模なものは届け出が要らないので、宅地のミニ開発のように、行政も住民も知らないうちに広がっていくことが心配されています。

行政への働きかけや監視を強める

実際、宍塚の里山周辺でも発電規模49.5キロワットという、規制の抜け穴を使った発電所が、地域住民も知らないうちに数ケ所できてしまいました。県や市町村によっては、乱開発を防ぐために、届け出が必要な発電所の規模を10キロワット以上としたり、住民説明会を開かせるといった規制強化の動きが出ていますが、土浦市ではまだそうなっていません。

森や林は、光合成で大気中のCO₂を固定するだけでなく、多様な生物がすむ場所となっています。その環境は、一度破壊されると元に戻すことが困難になります。

多様な自然環境に恵まれ、絶滅危惧生物が数多く生息する、宍塚の里山周辺の雑木林でも、木々を伐採して太陽光発電所の建設が始まっています。今後、里山の環境破壊を伴う乱開発を防ごうと、私たちの会は、行政への働きかけや監視を強めています。(宍塚の自然と歴史の会 会員)