【コラム・中尾隆友】先日、つくば市において、近隣の企業経営者や市町村幹部の方々に対して、「2020年代における企業の経営戦略」という題目で講演をさせていただいた。要約すると、以下の通りとなる。

これから、日本には3つの大きな波、すなわち、「人口減少」「デジタル化」「脱炭素化」の波が訪れる。

1つ目の人口減少については、日本の2045年の人口は2015年と比べて16.2パーセント減少するのに対して、茨城県は23.4パーセント減少とかなり大きい。TX(つくばエクスプレス)沿線を中心に人口が増える県南地域と、人口が激減する県北地域の、2極化が進む見通しだ。人口減にどう対応していけばいいのか? 今から考えておく必要がある。

2つ目に、日本では人手不足が進む中で、デジタル化によって効率性を上げなければならない。しかし地方は、大都市圏よりも中小零細企業の割合が多く、デジタル化が遅れがちだ。企業の商品・サービスの商圏を広げる上でも、地方の企業こそ創意工夫をしてデジタル化を進めるべきだ。

3つ目の脱炭素化は、環境にとって必要不可欠だが、企業にとっては大きな負担となる。特に日本は、脱炭素化の国際的ルール作りにうまく関わることができていないので、長期的に見て、国際競争で不利になる可能性が高い。加えて、脱炭素化に関連する法律や商慣習が固まってくるのはまだ先のことで、不確実性が大きい。

自分が成長できるか」「やりがいがあるか」

これら3つの流れを踏まえた上で、経営者が最もやってはいけないのは、根性や気合いといった、マンパワーに依存することだ。従業員が疲弊し、採用ができなくなってしまうからだ。地方ではこの手の経営が多いので注意が必要だ。

とりわけ、今の若者は、仕事に対して「自分が成長できるか」「やりがいがあるか」を重視する。優秀な人材ほど、この傾向が強い。その意味では、若者に仕事の裁量権をある程度与えたうえで、モチベーションを引き上げたり、下からの意見を吸い上げたりする仕組みをつくることが求められる。

近年、野村ホールディングスや電通といった業界最大手の企業でさえ、マンパワー依存の経営に頼り過ぎたために、危機の一歩手前まで追い込まれた。企業の価値は「最後は人」になる。経営者にとって重要なのは、国や自治体のアシストを受けながら、デジタル化が進んでも職を失わない、スキルを持つ人材を育てることだ。(経営アドバイザー)