【コラム・田口哲郎】

前略

5月15日、つくば駅そばの「トナリエ」に用事があり、帰りにセンター広場のソトカフェでコーヒーを飲んでいたら、心地よい音楽が聞こえてきました。「音の宝箱つくば2022春」という音楽イベントが行われていたのです。音楽家が野外で美しい音を奏でるというもの。センター広場は広いペデストリアンデッキより低いところがあり、そこで演奏されるので、音が広場全体によく響いていました。

どの曲も素晴らしい演奏でしたが、印象に残った曲がひとつありました。アニー・ローリーのようなアメイジング・グレイスのようなダニー・ボーイのような懐かしいメロディで、どこかで聞いたことがあるような、でも初めて聞いたな、この曲!という感じで、曲名が思い浮かびません。

スマホに聞かせて判別すればよいと気づいたときは、次の曲になってしまっていました。そこでグーグルに「アニー・ローリー アメイジング・グレイス ダニー・ボーイ 似た曲」と思い浮かんだまま入力して検索をかけますが、いまいちピンとくるものがヒットしませんでした。

あれはなんだろう、あのバイオリンの旋律の郷愁をかき立てるなんとも言えない、ゆったりとした良い音楽は! 知りたい欲はつのります。スマホとしばらく格闘していて、ふと気づきました。広場に通じる階段の上に、看板とチラシが置いてあることに。

チラシにバッチリと曲名が書いてありました。「ピムキーン」というアイルランド・ミュージックだそうです。「ピムキーン」とはアイルランド語でカボチャという意味と知りました。アイルランドか! そういう曲相だったなあ。

タイトルがアイルランド語なんてエンヤみたいだなあと思い、アマゾン・ミュージックにあるのだろうかと、また検索をしましたが出てきません。どこかのCDに収録されているかもと検索しますが、見つかりません。わたしの探し方がまずいのかもしれませんが、この曲はまだ音源化されていないのではないでしょうか。

YouTubeで、演奏者と思しき方々が「ピムキーン」を奏でる動画が掲載されていました。ソトカフェで聞いたままです。とても素晴らしい。

ケルト音楽はどこかなつかしい

ところでアイルランドの曲は魅力的なものが多いですね。さきほど名前をあげたエンヤの曲は世界中でヒットし、日本でも人気です。情緒豊かで心に響くメロディがアイルランドの曲には多いです。

アイルランドにはケルト文化が残っていて、これはキリスト教以前の古いものです。アニミズムみたいに木に精霊が宿ると考えたり、海の向こうに極楽のような場所があると考えたりする文化ですので、日本の古来の文化と相通じるところがあるのかもしれませんね。だからどこかなつかしい。

新しい都市つくばの真ん中で、思いがけず「エモい」曲を聞けたことに感謝です。「ピムキーン」。音源化されていないのでしたら、ぜひしていただきたいと思います。ごきげんよう。

草々(散歩好きの文明批評家)