【コラム・阿部きよ子】私たち「宍塚の自然と歴史の会」では、1995年から里山の中の休耕地となった谷津田で稲作りを開始し、1999年以降、子どもから大人までを対象とした「田んぼ塾」を開いてきました。そして、2015年からは、新たな稲作方法を研究開発する「自然農田んぼ塾」と子ども中心の「田んぼの学校」に分かれて、谷津田の稲作に取り組んできました。

田んぼの学校は、年度ごとに家族単位で「生徒」を募集し、①稲作と稲作に伴う伝統文化を学ぶ食農教育、②里山の自然や田んぼの環境について学ぶ環境教育―をしています。

今年度は、定員越えで数家族お断りしましたが、33家族で発足しました。豊かな生態系を持つ宍塚の里山の入り口の休耕田を地主さんからお借りし、機械化以前の方法で、肥料は米ぬかだけ、完全無農薬で稲を育てています。伝統行事の「ならせもち」用に、白、赤それぞれ1種類の餅米の品種と藁(わら)細工用の品種を栽培しています。

子どもが田植えや稲刈りに参加する「田んぼの学校」は各地にありますが、私たちの学校には、以下のような特色があります。

a.子どもも大人も主体的に取り組む、b.種まきから食べるところまで継続して稲と関わる、c.里山の四季の変化の中で感性や知性を駆使し、自然環境を体験しながら学ぶ、d.毎回、作業の意味や稲作の変化について学習し、日誌もつけ、ときには「宿題」もする、e.経験も知識も出身地も異なる老若男女、大人子どもが交流し学び合う―。

子どもは泥んこを楽しむように

参加者が増え、出席率も高いので、種まき、しろかき、田植え、草取り、稲刈り、脱穀(足踏み脱穀機使用)と選別(唐箕=とうみ=)などの作業は、5~6回に分けて実施しています。かかし作りの竹の準備、かかしとお別れする「かかし送り」、正月の伝統行事「ならせもち」(昨年度は餅の代わりに紅白団子を枝につけました)などは、担当係の家族を中心に、準備から片付けまで皆で取り組んでいます。

子どもも大人も、よく働き、よく学びます。最初は泥に入るのが怖くて泣いた子も、他の子の様子を見ながら勇気を出せるようになり、泥んこを楽しむようになっていきます。泥だらけの服を自分で井戸水で洗って着替える子もいます。

子どもたち同士が刺激し合いながら、頼もしい働き手になっていく姿から、親たちもスタッフもエネルギーをもらっています。昨年度は「トム・ソーヤスクール企画コンテスト」に応募し、努力賞をいただきました。

コロナ禍で、皆が一同に集まる機会が減ったこともあり、HP担当の親御さんたちが、作業や行事の様子がわかるHPと、子どもたちの日誌や絵のHPを開いています。皆さまも、私たちの会の田んぼの学校のページを開いてみてください。大人のスタッフはすべて無償ボランティアですが、随時募集中です。(宍塚の自然と歴史の会 会員)