【コラム・川浪せつ子】「ラーメンまで、描くのね!」。仕事仲間から驚かれました。うん、そう。でもラーメンを描いたのは、生まれて初めて。早く食べないと伸びちゃうし。そして難しそうで。でも今回描いて、いろんなことを思い出しました。

このお店「珍来」は、洞峰公園の道路の向かい側、今はマンションになっている場所にありました。2階建ての雑居ビル。30年くらい前、よく食べに行きました。息子3人がまだ小さくて、外食ではじっとしていられないころ。ご飯を作るのがしんどい時、その珍来さんしか行けなかったのです。

テーブルコーナーは「コ」の字型で、出口部分に親がひとりずつ座ると、子供はウロチョロ出ていくことができません。そして帰り際、お店の方から「ぺろぺろキャンディ」をもらうのが楽しみで、おとなしくしてくれました。元気すぎる息子たちと、格闘の日々でした。

深々としたお辞儀にウルウル

ほどなく洞峰公園店は無くなってしまいました。10年ぐらい後、牛久学園線を走っていた時に見つけた茎崎店。ふと寄ってみると、洞峰公園店のオバサンがいました。おいししいご飯を作ってくれていたオジサンは亡くなり、今は親戚の人が調理をしているとのこと。

その後ずっと疎遠だったですが、今年に入ってから行ってみました。そしてオバサンとお話。

茎崎店と洞峰公園店は、同時にやっていたそうです。でもオジサンが亡くなり、あちらのお店は閉めたと。働き過ぎだったのかなぁ~、感じの良い方でした。うちの息子たちは4年間で3人。私は仕事もしていたので、ヘロヘロ。そんな時、あそこのラーメン屋さんは救いの場所でした。

そして今回、茎崎店を訪問して、再度感動しました。整った店内。会計後のオバサンの深々としたお辞儀。なんだかウルウルしました。目が回るような日々のつかの間に、癒しの時間をくださったお店。おかげさまで、息子たちは税金を払うことのできる大人になりました。本当にありがとうございました。いつまでもお元気で。(イラストレーター)