【コラム・塚本一也】前回のコラム「TX延伸ルート選びに必要な視点」(4月8日掲載)では、国家プロジェクトの行方に迷いが生じたときには「そもそも論」に立ち返ることが重要であると述べました。そこで今回は、延伸先選びの視点をいくつか示してみます。

茨城空港を「国際空港」にするには?

第1の「そもそも論」は、首都圏の羽田・成田国際空港はいずれ「満杯」になることが予想されるため、第3の国際空港として、茨城空港の機能をアップすることです。TXが茨城空港に伸びるだけでなく、羽田との直通運転が可能となれば、首都圏の様々な航空需要に応える能力を備えることになります。

国際化が格段に進むであろう10~20年先を見据え、また甚大な被害をもたらす大規模災害を想定したバックアップ機能として、TXを首都圏の重要交通インフラに位置付ける視点です。

アジアの大手LCC(格安航空)会社に茨城空港を使ってもらおうと、県がその社長を現地へ招いた際、「TXでも乗り入れてくれるなら就航させてもいいですよ」といった発言があったそうです。彼らは、TXの茨城空港乗り入れが実現すれば、使い勝手が悪い成田便を茨城便に切り替えるのではないでしょうか。

しかし、この構想に問題がないわけではありません。茨城空港は航空自衛隊の飛行場ですから、現状では滑走路使用に制限があり、成田並みの国際便受入は無理です。でも空港の周辺には平坦な土地が豊富にありますから、やる気になれば滑走路拡張は可能です。

もう一つの問題は、競争相手として米軍横田基地があることです。元都知事の故石原慎太郎氏は、横田基地の軍民共用構想(首都圏第3国際空港化)をぶち上げ、同基地への高速鉄道乗り入れを準備しました。しかし、共用交渉は進んでいません(茨城空港にチャンスがあります)。

水戸を「東京通勤圏」にするには?

第2の「そもそも論」は、北部延伸によって県内経済を活性化するために、水戸市とつくば市をTXでつなぐというインフラ整備構想です。その沿線が活性化するだけでなく、常磐線とのコラボレーションによって、水戸~東京が「1時間圏内」になるでしょう。水戸地域がごく普通の「東京通勤圏」に入るということです。

TX延伸先絞り込みは関心を呼んでいますが、当事者の1人、つくば市長は関心が薄いと聞きます。TX延伸が都市機能を拡大すること(第3の「そもそも論」)が分かっていないようです。つくば市内には「県立高校が少ない」という声がありますが、土浦方面に伸びれば、土浦市内の高校への通学が容易になり、教育圏が拡大します。

政治や行政を担当する者にとって、インフラ整備と財政運営は基本中の基本です。視野を広く持ち、鉄道や道路で他市とつながり、自らも発展するという構想が必要ではないでしょうか。私事によりこのコラムを少しの間休載します。再開の際には、またTXの話をしたいと思います。(一級建築士)