《続・気軽にSOS》8 イヌ好き、ネコ好き、ヘビ好き


【コラム・浅井和幸】イヌ好きのAは言いました。「イヌの、人に忠実で賢いところが好きだ」。ネコ好きのBは言いました。「ネコの、自由で気まぐれなところがかわいくて好きだ」。了見が狭いと、この会話だけで、AはBに、BはAに否定されたと感じてけんかになることがあります。自分と違う感覚、意見は、否定される言葉なのだと解釈してしまうのでしょう。「イヌの方が好き」「ネコの方が好き」と、勝手に解釈してしまうのかもしれません。

さらに人は、自分の意見を正当化したい、強く伝えたいという気持ちで、比較して伝えます。Aは「ネコよりもイヌの方が好きだ」と言います。Bは「イヌよりもネコの方が好きだ」と言います。前の会話よりも、自分の好きな動物、自分の意見を否定された気持ちを強く感じることでしょう。

そして人は、自分の気持ちを伝えるために、別のものを否定して伝えるようになります。Aは「ネコは気まぐれで呼んでも来ない、冷たい感じがする。その点イヌはとてもかわいい」と言うかもしれません。Bは「イヌは人にこびるし、ほえてうるさい。その点ネコはかわいい」と言うかもしれません。

このような言い合いになったら、冗談のやり取りでない限り、本気のけんかになるかもしれませんね。

ヘビ好きのC。積極的にヘビ好きを言うことはありません。それでも隠しているわけではありませんので、話の流れで、ヘビのかわいらしさや魅力を話します。かなりの確率で「え~、ヘビ?」と嫌な顔をされます。それも織り込み済みで、Cは「そうだよね。気持ち悪いと感じるのが普通だよね。でも自分はヘビが好きで、かわいいって感じるんだ」と伝えます。

イヌやネコと違い、ヘビが好きだという人は少数派であることを認識しています。またヘビが嫌いである人が多いことも分かっているのです。なので、ヘビが好きであることや魅力があることを無理に思い込ませようとすることもありません。相手がヘビを嫌いでも、自分と感覚が違うだけで否定されたと憤慨することはありません。

あなたは、趣味や学歴、生き方や習慣など、自分の安心と正当性を「普通」という言葉で表現して、相手が少数派であることで間違いなのだと押し付けていませんか?「多様な価値観を認めるのが普通だ」「普通は大学を出ているでしょ?」「年収〇〇〇万円は普通でしょ?」「これぐらいのことは出来て当たり前だよね」「そこまで言わなくても普通は分かるでしょ?」

普通という言葉を投げかけられるのが嫌いだと考えている人が、結構、この普通という言葉を相手に投げかけている場面によく出くわします。多数派なのか、少数派なのかではなく、相手の気持ちや立場も、自分の気持ちや立場も尊重しながらコミュニケーションが取れるとよいですね。少数派の方に正当性があることだって確実にありますし、どちらにも正当性があることも十分に考えられるのですから。(精神保健福祉士)