【コラム・奥井登美子】
「声がうまく出ないんです。どうしたらいいでしょうか? 医院に行くのもいやなので、薬屋さんに聞きにきました」

「すごく厚くて、いいマスクしていらっしゃいますね」

「そうなの、特別厚い、いいマスクですって、友達からもらったのよ」

「厚いマスクに合わせて、最近、大きな声を出していらっしゃいませんか?」

「うちのおじちゃんもおばあちゃんも耳が遠いから、マスクして聞こえるようにしゃべるのが大変なんです」

「ご両親と同居していらっしゃるのね、家ではマスク外していてかまわないと思うんですけれど」

「高校生の娘がうるさいんです。いま学校でコロナのクラスターがはやっているので…」

コロナの流行が若い人たちに広がって、高校生も対応に頭を痛めているのだ。

「娘さんを説得して、家ではマスクを外すか、薄いのにしては? アメをなめるとか、緑茶でうがいをするとか」

「えっ緑茶ですか?」

「そういうときは、強い消毒薬のうがいは皮膚を刺激しますので、避けた方がいいです。緑茶はタンニンも入っていて、喉にもいいと思いますけどね」

「マスク障害」もばかにならない

マスクも2年、3年も続けていると、ツラの皮の厚い人はともかくも、薄い人は皮膚炎に似た症状が出たり、急に気温が上がったりしたときに、アセモができてしまったりする。

「気温障害」に伴って「マスク障害」もばかにならない。ツラの皮の薄い人は夏のマスクに気を付けた方がいいのだ。

そういうとき、高価な消毒薬や高価な

ウエットティッシュを使って、早く直そうとする人種が多い。高価なものは効果があると思い込んでいる節がある。

皮膚炎、声患い。医者に行くほどでもないのなら、家庭にあるものを使い、なるべく皮膚と喉を刺激から守って様子をみる。1週間刺激を避けて、悪くなるようなら医者に看てもらう。

人類がこれほど長い間マスクをつけるのは、人類の歴史始まって以来の試金石。うまくマスクと付き合うしかないのだ。(随筆家、薬剤師)