【コラム・古家晴美】TXつくば駅から車で10分ほどのところにある、貸し農園を利用しているインド出身の30代女性サナさんとサミラちゃん(5歳)親子にお話をうかがった。来日して長いサナさんは、流ちょうな日本語で、3年前から借りている20坪(66平方メートル、年間使用料1万円)の畑について説明する。

家事育児に忙しいサナさんは、普段は週1~3回、この菜園に来て野菜の手入れをするが、天気がよくなかったり、子どもが春休みだったりで、今回は2週間ぶりだった。

今、畑には何もありませんよと、あらかじめ言われていたが、実際目の当たりにすると、畑は各種のハーブで青々と彩られていた。サフラン、ミント、パクチー、ローズマリー、ディルなど、近くのホームセンターで購入したものだ。ドラムスティック(ワサビノキ、未熟な種ざやをカレーなどに入れる)をホームセンターで見つけたときには、故郷が懐かしくて思わず買ってしまった。

このほか、いつもたくさん採れるホウレンソウ、インドでは使わないが健康に良いので選んだケールやキュウリ、インゲン、トマト、ゴーヤなども作っている。ジャガイモは今年初めて挑戦する。また、秋から冬にかけて、里芋や大根、ネギも作っていた。イチゴ、ラズベリーやグーズベリー(西洋スグリ)、ブルーベリーなどはサミラちゃんのお気に入りだ。

トマト、キュウリ、インゲンなどの夏野菜やケールは、自宅のベランダのビニールハウスで、種をまいてポット苗を作る。バジルのように、すぐに使いたいもの以外はある程度の大きさになってから、こちらの菜園に持って来て植え付ける。

菜園で地域の人たちと交流

無論、インド料理も食べるが、家族がパスタ好きなので、ペペロンチーノに新鮮なバジル、ローズマリーポテトにハーブを使うこともある。サミラちゃんは日本の甘いカレーや肉ジャガが好物だと言う。

昨夏、キュウリとゴーヤが大量に採れた際には、深い穴を掘って土と混ぜて埋め、堆肥を作った。

コロナ禍でどこへも行けなかったので、ここで過ごす時間はとても楽しく貴重だった。時々、姿を見せるキジを眺め、夏にはトンボ、秋にはバッタを捕まえて過ごした。

同じ菜園の利用者である年配の方たちからは、季節ごとに作業や作物について助言をもらい、畑でおしゃべりし、リラックスした気分になる。また、種や収穫物を相互にやり取りすることもあると言う。

異国で、ストレスも少なからずあるであろう生活に、菜園での暮らしが潤いを与え、家族や地域の方々との交流が心のバランスをもたらしているのではなかろうか。(筑波学院大学教授)