【コラム・奥井登美子】居間の片隅に、ハガキ15枚ぐらいのささやかなコーナーをつくってある。わが家の「年賀状傑作選」展示コーナーだ。勝手にいろいろな賞をつけてある。「ユーモア賞」「可愛いで賞」「さよならしま賞」など。

最多受賞者は医者の関寛之氏だ。今年の相撲取りも面白かったが、傑作中の傑作は昨年トリ年の「とんび」の絵。昔流行した冬の外套「とんび」を着た男の人が描かれている。「ふと正月に懐かしむ昭和へのノスタルジア、絶滅危惧ファッションとんび」と解説された木版画である。

これを見て私は笑いすぎ、お腹が痛くなってしまった。本当に痛くなったら、関先生に診察してもらうしかない。「可愛いで賞」は小さな子供と犬の写真。何枚もあって何回見ても心がほどける。

「さよならしま賞」は「誰が名付けた子犬のワルツ 今年のリズムが舞っている 元旦」。従姉妹の和子さんから筆書きの年賀状が来たその日、彼女が亡くなったという知らせが入った。天国からのハガキかな…と、一瞬どきんとしたが、年賀状を書くのは年末だから、人生の最後まで筆で字を書くほどしっかりしていた証拠だと考えることにした。貴重な形見になってしまった。

老人になると、若いころには思いもしなかった意外なことが起こる。年賀を取り交わした友達が次々に亡くなって、賀状の来る数がガタンと減ってしまった。淋しい限りである。

私が年賀状を出すのは1年1回だけ、旧友や親戚に「まだ生きていますよ」という存在証明の証拠になると思うからなのだ。

「年賀状を書くことが体力的にできなくなってしまったので今年で最後とします。しかし、頂くのはとてもうれしいので今までどおりにして下さい」と、まったく都合のよいことを書いてくる友達もいる。

絵描きさん、写真家、研究者(設計図の絵柄もある)など、個性的な作品は何回見ても楽しい。このコーナーは、1年間毎日眺めて、友達から励ましてもらう貴重な場なのだ。(随筆家)