【コラム・坂本栄】「つくば市民の声新聞」第6号が発行され、五十嵐市長が同紙を名誉毀損で訴えた裁判について「市長が取り下げ 本紙の完全勝利」との大見出しで特集。この迷訴訟を総括しました。未読の方は「4・1ページ」と「2・3ページ」をクリックしてください。発行人の亀山氏からPDFを提供してもらい、リンクを張りました。

「バタバタ」と「オウンゴール」

五十嵐氏の「完敗」に終わった訴訟について、ミニ紙最新号は「発端」「経緯」「終結」「本紙見解」「読者の声」に分けて総括しています。内容は多岐にわたりますが、市長が1市民を訴えた裁判は「…市長のバタバタに終わった…」(リード)と「…亀山提訴は『オウンゴール』…」(終結)という表現に集約できるでしょう。

というのは、名誉毀損提訴(原告・五十嵐氏)→ 条件付き取り下げを提案(原告)→ 同提案を拒否(被告・亀山氏)→ 別の訴え(虚偽事項公表罪)を追加(原告)→ 無条件取り下げを提案(原告)→ 同提案を容認(被告)と、五十嵐氏の腰が定まりませんでした。裁判に持ち込んだあと、勝てないと気付いたのか、「口外無用」の条件付きで取り下げを図ったり、訴訟の組み立てを強化したり―と、「バタバタ」が続いたからです。

また、五十嵐氏は「(名誉毀損の)立証は困難だった」「(虚偽公表罪も)立証は困難だとの判断に至った」(フェイスブックでの声明)と言っているように、提訴そのものの間違いを認めました。自ら仕掛けたゲームで「オウンゴール」したようなものです。

五十嵐氏は「表現の自由」を侵害

本紙見解の箇所で、亀山氏は五十嵐市長の行為を批判しています。中見出しから引用すると、「(記事が)なぜ名誉毀損なのか!理解できない」、「(ミニ紙が展開した)市政批判を裁判に持ち込むのは異例」、「(追加訴えの)公選法の虚偽事項公表罪も立証できず」、「(市長の提訴は)民主主義の根幹『表現の自由』を侵害」―と。

共通するのは、ミニ紙の記事は虚偽だと決めつけ、発行人を提訴することで、市政批判封じを図った市長への怒りです。訴訟に萎縮したら、市政の点検もできなくなると、危機感を覚えたようです。

私も、コラム126「…市民提訴…を検証する」(2月7日掲載)、同127「…市政批判はウソだった?」(2月21日掲載)で、この訴訟を総括。①五十嵐氏は市長の適格性に問題がある、②組織を率いる大人の常識が足りない、③広報の理念に反する裏工作を行った、④政治家の常識ともいえる「言論の自由」が分かっていない―と指摘しました。

編集を訴訟の経緯に絞ったせいか、6号では「記事は虚偽だ」への反論はあまりされておりません。進行中の市施策への総点検も含め、次号に期待しています。(経済ジャーナリスト)