【コラム・斉藤裕之】ちょうど1年前に看板製作を頼まれた友人が経営する打ちっぱなしゴルフ場。今回の依頼は打席を仕切っている板の新調。打席数分40枚の板にトリマーという工具で数字を掘って色を塗る。まずはホームセンターへ材料の調達に。使うのは俗にツーバイ材という輸入材で、厚さ4センチ、幅25センチ、長さは3.6メートル。これが都合30枚ほど要る。

ところが、そこで見たものは目を疑うような値札。以前の倍ほどの値段かと思うほど。これがうわさの「ウッドショック」か! コロナ禍の影響、中国の買い占め、円安などが原因と聞いているが…。自分の腹が痛むわけではないので多少割高でもいいのだが、生まれ持っての貧乏性。結局、その日は買わずじまい。

次の日、別のホームセンターに。すると、昨日見たものよりも大分安い値段が付いている。やれやれと思って材料に手をかけた瞬間、いやな予感が。久しぶりの腰痛黄色信号だ。これはヤバいぞ。

結局、積み込みは手伝ってもらって、何とかなったものの、家に着いたころには赤信号が点滅し始め、軽トラから材料を降ろすころには完全に赤信号。ウッドショックで「及び腰」になったのがいけなかったのか、このタイミングで「ぎっくり腰」のダブルショック!

若いころの背負い投げの鍛錬がたたって始まった、腰痛と付き合う人生。症状が出るたびに、レントゲン写真で「第五腰椎剥離(ようついはくり)」「すべり症」と診断されて、日ごろから気を付けていたのだが…。今回は前触れなしに突然やられた。

西洋で「魔女の一撃」と言われていることもわかる気がした。しかしながら、そうそう寝ているわけにもいかない。いや寝ていても痛いので、時々グキッと激痛が走るのを我慢して作業に取り掛かることにした。

タラの木の「ウッドチェック」!

ところで、文字通りウッドショックは業界に相当な打撃を与えているらしい。それなら国産材を使えばいいかというと、これがまたいろいろと根深い問題があるという。ただ、大工の弟が嘆くのは、現在使われる国産材のほとんどが人工乾燥によるスカスカの「腰抜け材」で、細工に耐えうる粘りが全くないということだ。

「どうせ金物でつなぎ留めるし、石膏ボードと壁紙で覆うから、関係ないけどね」と、やや投げやり気味に木造文化の行く末を案じる。

しかし、今回の腰痛もなかなかしつこい。それでもなんとか無事に作業を終えた。ついでに友人の言葉に甘えて、敷地内のナラやクヌギを何本か切ってまきを作ることにした。しかし、チェンソーで木を切り倒す時にはいつもドキドキする。危険な作業であることはもちろんだが、何十年か生きていた木を切るのだから。大げさに言えば「命」を感じる瞬間。

倒れ始めるときの木のきしむ音や、ドドーンという地響きは神聖にさえ感じる。ホームセンターのツーバイ材も、元は生きた1本の木だったことに改めて気づく。その時ふと、私の目に留まったのは…。立派なタラの芽! こういうときは腰が軽い。いざタラの木のウッドチェック!(画家)