【コラム・福井正人】私たちの会は毎月第3日曜日、地元農家と「田んぼさわやか隊」を結成し、宍塚の里山周辺の水田の整備活動を行っています。このエリアの農業水路には、春になると「フナののっこみ(産卵のための遡上=そじょう=)」が見られます。今回はそこで見られる魚たちを紹介します。

宍塚大池を水源とするこの水路は、大池から備前川までの約2キロ、宍塚の里山から北東に流れています。上流域は里山の谷津田の脇を流れる土水路で、昔ながらの水路の景観を残しています。中流域が田んぼさわやか隊の活動エリアで、圃場(ほじょう)整備された田んぼの脇を流れていますが、土水路のまま残されています。

下流域は三面コンクリートになっていますが、中流域から流出した土砂が堆積していることが生き物にはプラスになっているようです。残念ながら、上流域の里山内の水路と中流域の土水路の間には、コンクリートU字溝暗渠(あんきょ)と約40センチ水位差がある場所があります。このため、上流域と中流域の魚類の行き来、特に遡上を阻害しています。

会が地元の方のお話をうかがってまとめた聞き書きには、昔はウナギをはじめとして多くの魚類が下流側から宍塚大池まで遡(さかのぼ)っていたことが紹介されています。それを思うと残念ですが、里山内の水路には、いまでもドジョウやヨシノボリなどの魚類や多くの生き物を育んでいます。

備前川から産卵のために遡上

中流域に目を向けると、水路は里山の谷津田域のそれに比べると直線的ではあります。でも、土水路として残されているため、側面や底面にデコボコがあり、植物なども生えるため、水の流れに緩急ができ、隠れ場所もあって多くの生き物に生息する場を提供しています。

特ににぎやかになるのが、田んぼに水を入れ始まる4月~初夏です。4月になるとフナが備前川の方から産卵のため遡ってきます。これが「のっこみ」です。特に、雨が降って水量が増えた翌日に多く見られます。水位の上昇や水の濁りが遡上を誘発しているのかもしれません。

5~6月になると、この水路でふ化したフナの子どもが見られるようになります。また5月下旬から初夏にかけては、ハゼの仲間(ウキゴリ、ヨシノボリ、ヌマチチブ)の子どもたちが霞ケ浦から備前川を経て遡ってきます。この水路が「魚のゆりかごと」して機能していると思うと、うれしくなります。

水量が少なくなる秋には、これらの魚たちは備前川の方へ下っていきますが、秋から冬の間も常に水が流れているため、水が枯れることはなく、ドジョウやヨシノボリなどは通年見ることができます。こうして見ると、田んぼさわやか隊の活動エリアが、多くの生き物を育む場所としても重要なことが分かります。

田んぼさわやか隊では隊員を募集しています。興味を持たれた方のご参加をお待ちしています。(宍塚の自然と歴史の会理事)