【コラム・浅井和幸】ある引きこもり状態の青年がいました。母親との関係も悪く、外出をすることはほとんどなく、人との接触はほぼない状況でした。しかし、祖母の介護をしているし、話をしていると気遣いもあり、周りの悪口を言わない、元運動部で健康な様子です。

元気で若いのだから、ぜいたくを言わず働いて、お母さんを助けたらよい―。この状態の青年に、そうアドバイスをするのは簡単でしょう。

今、その青年は実家から仕事に通い、家にもお金を入れ、お母さんの助けになるように生活をしています。だからと言って、最初に会ったときに、そのようなアドバイスをすることがよいことでしょうか。私はそうは思いません。むしろ逆効果になると考えています。

生活習慣は簡単に変えられない

人はそう簡単に生活習慣を変えることはできません。頭でわかっているからと言って、それを行動に移すには時間が必要です。うまくいかないことが続き、なかなか前を向けないときは、ちょっとした喜びを感じるような「伴奏」が必要になるものです。

その青年は最初、私が訪問をしてささいな話をし、その後、親元を離れてシェハウスで暮らようになりました。今までとは違うけれど、何気ない生活をし、たまたま生死も危ぶまれるような体験をし、見ず知らずの人に助けられ、いろいろと考え悩み、苦労をして親元に帰って、仕事を見つけたのです。

仕事の面接に受かって、もう出社するだけというときにトラブルがあり、就職は見送ることになったという体験もしました。その間の良かったことも悪かったことも含めて、かかった時間も含めて、すべてが必要だったのだと思います。薄っぺらな正論のアドバイスは、その前では霞むような、軽い正義感でしかないのです。

その母子の様々なことを取材して書かれた記事が「サイゾーウーマン」に掲載されています。ぜひ、下のリンク先の記事を読んでみてください。(精神保健福祉士)

ずっと良い子だった優秀な息子が―「大量のごみが散乱する真っ暗な部屋」で見た、信じられない光景

https://www.cyzowoman.com/2021/04/post_335365_1.html

大学生の息子がゲーム依存症でひきこもり!「ネット依存外来」に通院も打つ手なし…母が助けを求めた先は?

https://www.cyzowoman.com/2021/04/post_335366_1.html