【コラム・室生勝】前々回から掲載している「地域包括ケアシステムの姿」は、真ん中の高齢者を「介護が必要になったら…在宅系サービス、施設サービス」、「病気になったら…病院、かかりつけ医」、「地域包括支援センター、ケアマネジャー」、そして「介護予防サービス」など、いろいろな職種が連携して支えている解説図である。

在宅サービスには、ヘルパー、デイサービス、デイケア、ショートステイ、訪問看護、訪問リハビリなどがある。かかりつけ医は、通院・在宅医療、病院は急性期に入院を引き受ける。地域包括支援センターは、高齢者が要介護にならないように介護予防に務める。ケアマネジャーは高齢者が要介護になったら適切な介護サービスを利用できるようマネジメントする。多くの職種が関わっているのだ。下にある介護予防サービスには、市町村および民間のサービスのほか、地域の住民ボランティアが提供する生活支援・介護予防サービスもある。

厚労省は「地域包括ケアシステム」の中でも、在宅医療と介護の連携強化が最重要と考え、2012年度から各市町村に、在宅医療介護連携拠点事業を医師会と協力して実施するよう勧めてきた。さらにそれを発展させ、15年から在宅医療介護連携推進事業の実施を促してきた。「連携拠点事業」から「連携推進事業」に前進させるわけだ。本年度から全ての市町村で取り組む。

「連携拠点事業」を実施した市町村や医師会など20事業者の報告を県ホームページ(HP)で見ると、その成果は事業に参加した在宅医療・介護の多職種が連携して切れ目のないサービスを住民に提供すること、そのためには多職種への相談支援と研修の見直しが必要であること、そして地域住民への普及啓発が欠かせないことを学んだことだろう。

この事業には医療介護福祉関係者全員が参加したわけでない。参加者しなかった多職種にどれだけ浸透するかが課題である。実施した多くの市町村や医師会のHPは、参加しなかった医療介護福祉関係者にその概要を伝えることができても住民が理解できる内容ではない。住民の理解を得るには冊子だけではなく、出前啓蒙講座を小地域で実施すべきであろう。

県南2市と医師会では、経年的に取り組んだ実施事業の内容をHPに掲載している。各診療所の医師がケアマネジャーや多職種が面談できる曜日と時間帯(連携タイム)と在宅医療の内容がわかる。これで、かかりつけ医と連携が進むだろう。しかし病院医の連携タイムがあるとは聞いていない。

市民には、「連携拠点事業」の成果の中で、各医療機関の在宅医療内容が一覧できるようになったのが好評らしい。かかりつけ医がどの程度の在宅医療を提供してくれるのかわかるからだ。かかりつけ医を替えなきゃいけないのかと不安になる市民も出てくるだろう。(高齢者サロン主宰)