【コラム・玉置晋】10月29日発生した大規模太陽フレアに関する情報は、SNS上でちょっとした騒ぎになり、夕方のテレビニュースでも放映されました。この太陽フレアにより発せられたガスの塊「コロナ質量放出(CME)」は地球の南方を通過し、地球周辺に影響はほとんどありませんでした。しかし、そのころ、太陽では新たな太陽フレアが発生しました。[以下時間表記はUT(世界時)]

2発の太陽フレアはそれぞれ地球方向にCMEを放っていました。11月1日10時58分:中規模太陽フレア発生。11月2日10時52分:中規模太陽フレア発生。日欧米の研究機関も、数日後に強い磁気嵐が発生するとの予報を出していました。地球から150万キロの距離にある監視衛星がCMEの到来を検知したのは、11月4日4時半ごろです。

一般的には、大きな速度のCMEが南向き磁場をもってと到来すると、大きな磁気嵐を引き起す傾向にあります。3日未満での到来は予報よりも早く、速度の異なる2発のCMEは地球に向かう過程で玉突き事故を起こしたために、早い到来となった可能性があります。

この件については、研究サイドの成果を待っているところです。そして、11月4日6時ごろから11月5日0時ごろにかけて、強い磁気嵐が発生しました。2015年3月にも似たようなイベントがあって、大きな磁気嵐を発生させたことがありました。だから、複数のCMEが発生した場合は注意が必要なのです。

宇宙天気情報の拡散は報道に依存

一撃目の太陽フレアの影響がほとんどなかったことから、人々の関心は薄れてしまったのか、新たな2発の太陽フレアの話題は、日本語の報道、SNS上ではほとんどありませんでした。そして、磁気嵐が強まったのが、日本では昼間であったこともポイントです。

そのころ欧米は夜。普段はオーロラが見えない地域でも、オーロラが見えたという話題が英語圏のSNSに出ていました。北海道と地理緯度が同じ米国カリフォルニア州サクラメントからも、赤色のオーロラがみえたそうです。今回は社会インフラへの影響は聞こえてきませんでしたが、過去の例からみると、あと一段階上のレベルになると、影響の兆候が見えはじめます。

この場合、オーロラが出た時点で社会インフラには影響が出てきていますので、現状の宇宙天気情報の扱いはちょっと危ういなと感じています。

今回の太陽フレアで分かったことは、情報の伝達は現象の社会に与える大きさ・リスクではなく、情報発信力の大きな報道担当者に依存していることが分かりました。一撃目の太陽フレアでは大手メディアがネット上で記事を発信したことで、SNS上に一気に情報が拡散しました。

このことから、宇宙天気情報を適切に社会に発信するためには、報道機関の中に宇宙天気に精通した人材が増えることが重要だと思いました。(宇宙天気防災研究者)