【コラム・浅井和幸】心理相談をしていて、頻繁に出てくる自己評価に「完璧主義」というものがあります。「自分が苦しいのは完璧主義だからです。それが悪いのは分かっているのですが、やめられないんです」という感じですね。

きっと元気なころは、完璧に仕上がるようにやり抜こうという強い意志で、様々な物事に対処してきたのでしょう。そして、それがうまく機能していた。しかし、そうそう完璧に物事をやり遂げられることが続くとは限りません。

そのうち、完璧じゃなくても物事を先に進めなければいけない場面に出くわすでしょう。それは、締め切りなのか、体力なのか、技術なのか、認識なのか―何かしら有限の壁にぶつかります。

何とかできる範囲で仕上げようと、適当なところで切り上げられればよいのですが、できないと心身ともに疲労が蓄積されていきます。その疲労のため、完璧にやり遂げようではなく、完璧にできないのであればやらないという考えや行動につながります。心身のストッパーが効いて、考えや行動ができなくなる状態です。

「なんとかなるさ」「適当に行こう」

それを、さらに無理して動いたり考えたり、完璧を目指すと、疲労は限界を超えます。過ぎた完璧主義は、オーバーワークになりやすいといえるでしょう。そうすると、心身にダメージを負い、適応障害やうつ病などの病を発症するかもしれません。

オーバーワークを一要因としてパニック障害となり、パニック発作を起こすかもしれません。パニック発作には、動悸(どうき)、手足の震え、発汗、息苦しさ、吐き気などが生じ、時には死んでしまうかもしれないという恐怖に襲われることもあります。

これらはある特定の場面で起こることがあり、人によって、飛行機に乗ること、車の運転をすること、テスト、舞台やプレゼンなどで緊張する場面で起こります。

それが繰り返されると、その場面を思い起こすことで発作が出ることもあります。明日仕事で飛行機に乗らなければいけないと考えるだけで、動悸が激しくなり、過呼吸を起こし、死んでしまうのではないかという恐怖に包まれるという状態です。

これらは自分1人で直そうと思えば思うほど、症状が悪化しやすいものです。適切な薬物療法と精神療法を受けるようにしてください。1000人に6~9人の人がパニック障害になるともいわれていますので、珍しい病気ではありません。

恥ずかしがらず、そして怖がり過ぎずに、病院や保健所、精神保健福祉センターなどに相談してみてください。茨城県には無料相談所があります。パニック障害は厚労省のページが分かりやすいと思います。

そして、次の呪文を唱えてみてください。「大丈夫、なんとかなるさ」「大したことない、適当に行こう」。(精神保健福祉士)