【コラム・山口京子】母とのおしゃべりで選挙の話になりました。「選挙なんか行ったことがない」と母。「ちゃんと投票しないと政治はよくならないよ」と私。母は「政治な んて知ったことじゃない。誰がやったって変わらないだろ」と言うのです。私は心のなかで、「政治に無関心でもその影響から自由な人は1人もいないよ。社会で起こることは人が判断を下しているのだよ」とつぶやいていました。

そう思いつつ、自分も分からないことだらけです。ただ、この30年を振り返ると、格差を広げる法律が各国でつくられてきました。それによって日本では、2008年末、派遣で働く人たちの「派遣切り」が起きました。その背景には2つのことがありました。

1つは、世界規模の金融危機のきっかけになった投資銀行リーマンブラザーズの破綻です。2000年以降、アメリカは住宅バブルでしたが、2007年ごろから住宅価格が下落、住宅ローン債権が不良債権化しました。それが、証券化されて組み込まれていた金融商品に波及、金融危機が起きました。背景として、金融緩和や「グラス・スティーガル法」(銀行と証券会社の兼業禁止)の改定が指摘されています。

2つ目は、労働者派遣法の改正です。1986年施行された時は専門業務に限定されていた派遣業務が改定で拡大。原則自由化され、製造業の派遣も認められていきました。これらのことが、構造的な格差を生む一因になったと思います。コロナ禍の下でも、解雇や派遣切りが深刻です。

勉強になる宮本太郎氏の本

もうすぐ、総選挙があります。大事なのは、①自分はどういった暮らしや社会を望むのか②現在の暮らしや社会はどうなっているのか③どういうやり方で望ましい社会に向かうことができるのか―などを、自分なりに考えることです。

手掛かりになるのが、宮本太郎氏の「貧困・介護・育児の政治」(朝日新聞出版)です。福祉政策の変遷と政治力学の関わりを「例外状況の社会民主主義」「磁力としての新自由主義」「日常的現実としての保守主義」という3つの表現を使って丁寧に分析されています。そして、「新しい生活困難層」の出現に向け、ベーシックアセットの福祉国家を提案しています。

9月にまいたダイコン、ハクサイ、ニンジンの芽が出てきました。夏に比べ、草取りは楽になりました。「雑草という草はない」と言いますが、種をまかなくても生え、人間の役に立たないと思われているのが雑草。人が種を植えて、手間をかけないと育たないのが野菜かなと…。(消費生活アドバイザー)