【コラム・塚本一也】前回述べた通り、茨城県内で乗車できる鉄道は11路線ありますが、これまでのコラムで、そのうち9路線を制覇しました。残りわずかとなりましたが、今回は東北本線の古河駅へ行ってきました。

古河駅は1885年に茨城県で最初に開業した駅であり、130年以上の歴史があります。建設当時は、利根川に橋を架ける技術が確立されておらず、水戸~東京間は水戸線経由で小山から東北線を利用していたそうです。古河駅を訪れたのは初めてでしたが、3つの点に驚きました。

1つは、古河駅の形態です。鉄道の駅舎は、地下駅、地平駅、橋上駅、高架駅―と、基本この4パターンに分類できますが、古河駅は、茨城県内ではTX(つくばエクスプレス)以外ではあまり例のない、高架駅という形態になります。

これは、例えば武蔵野線の駅舎のように、元々高架橋に線路があって、あとからホームを造る場合などに採用されます。しかし古河駅の場合は、駅舎だけを高架駅にして、その前後は線路が地平に降りてしまうという、ある意味、無駄な造りをしていることが不思議に思いました。

自由通路を優先して造る場合は橋上駅が基本であり、山手線の五反田駅のように、幹線道路が駅近辺を横断する場合には、高架駅が採用されます。しかし、あえて古河駅だけを高架にした理由について、元鉄道建築技術者の私は大変興味を覚えました。

古河駅のホーム

東京駅・新宿駅まで乗り換えなし

さらに、改札を抜けてホームへ上がると、始発駅でもないのに2面4線というぜいたくな設備にも驚きましたが、時刻表と行先の電光掲示板を見て一層驚きました。なんと、東京駅にも新宿駅にも乗り換えなしで行けるではないですか。千葉駅でさえ、新宿へ行くには錦糸町で乗り換えなければならないのに、古河駅はどちらへ行くにも乗り換えなしで、およそ75分の乗車時間です。

そして、最後の驚きは、なんと日中の湘南新宿ラインは快速の停車駅になっているではないですか。快速を利用すると、新宿までは約1時間であり、東海道線の駅に例えるならば平塚駅と条件的に等しくなると思われます。また、1日の乗降客数は約26,000人で、常磐線ならば勝田駅とほぼ同じぐらいです。

このように、いつの間にか底知れぬポテンシャルを備えてしまった古河駅ではありますが、駅前のビルは空室が目立ち、駅ビル以外にこれといった商業施設はありません。先月は古河駅に入構している20台ぐらいのタクシー会社が、事業から撤退してしまいました。

古河近辺では、圏央道を利用できる工業団地や企業の誘致に取り組んでいると聞きます。鉄道による都心へのアクセスも非常に便利ですので、2次交通などの整備に取り組めばさらに発展が見込めるのではないでしょうか。(一級建築士)