【コラム・坂本栄】きょう29日で今年度の大学の授業が終わる。もっとも期末試験日だから90分×2時限=3時間の講義はない。問題は採点。基本「述べよ」の出題をしているので150人分に目を通すとなると時間がかかる。経済部デスクになったとき下手くそな原稿に辟易したが(自分も新人時代はそう思われていたのだろうが)、似たような時間が待っている。

担当している授業は、1年生向けの必須課目と全学年を対象とした選択科目。必須科目の授業形式がなかなか面白い。半期15回を3人の先生がそれぞれ5回担当するという「オムニバス」方式。3人の担当分野は、政治、経営、法律。私は政治を受け持っている。

ユニークなのは私も含めて先生は「兼任講師」。つまり本業は別に持っており大学は兼務というわけだ。私は経済ジャーナリスト兼NPO理事長(兼ばかりだが…)。経営担当はパリパリの税理士。法律担当は公務員塾の主宰者。2人ともアラウンド40と私よりも30も若い。同じオムニバスの別グループにはアラウンド50の元市長もいる。

この3人とは期末試験終了後、JR大みか駅近くの洋風居酒屋で反省会を開く。ワインと海の幸を楽しみながら(近くに魚市場もあるそうだ)、今起きている諸々の問題について議論する。これは実に楽しい。

リアルポリティクス

担当する政治分野を授業計画から抜粋すると、1回:国政の基本構造 戦後72年で生じた問題、2回:政治と経済の関係 経済政策の効果、3回:国内政治と国際政治 安全保障、4回:国政と地方 国と都道府県の関係、5回:国と地方 国と市町村の関係。

各回ともメディアで取り上げられている問題から入り、各回のテーマに拡げるようにしている。憲法改正(1回)、アベノミックス(2回)、集団安保(3回)、地方創生(4回)、市町村消滅(5回)といった具合だ。分かりやすくと大学から話があったとき、この形式を提案した。

今春からも基本的には同じ構成にするつもりだ。しかし新年度は憲法改正が最大の政治課題になるから、1~5回全部が同テーマになるかも知れない。大学生は有権者であり、多分現在進行形になる憲法問題に強い関心を持たせたい。

授業ではバランスを心がけているが、①現憲法は敗戦直後の米占領時代に成立した②朝鮮戦争に続く米ソ冷戦で非武装の前提が崩れた③この20年の間に中国のパワー、韓国と北朝鮮の立ち位置が激変した④米国も相対的に力が低下、これまでとは違った付き合い方が必要になる―と指摘している。これが政治のリアリズムだと。(大学兼任講師)