【コラム・坂本栄】9月初めの誕生日で後期高齢者になりました。一生の分け方はいろいろあると思いますが、~20歳を「準備期」、~65歳を「仕事期」、~75歳を「引退期」とすれば、75歳~は「そろそろ期」でしょうか。先日観た「キネマの神様」の元映画人(沢田研二)は、懐かしい映画と自作の脚本をダブらせながら、上映館の座席で死んでいきます。78歳でした。私もあと3年ぐらいは頑張りましょう。

体は劣化しても頭は20代後半?

数年前から使っているフェイスブックでは、「関心は政治/経済/軍事。身体は劣化しているが頭は20代後半。独製セダンから国産SUVに乗り換え若ぶっている」と自己紹介しています。直すか考えましたが、そのままにすることにしました。10年数前の顔写真もそのままにし、SNSの世界では仕事期が続いていることにします。

大学の方は今年度いっぱいで講師の任期が終わります。時事問題を織り交ぜながら、国際経済や国際政治の構造について講義してきました。仕事期(経済記者)の知識を最新版に更新でき、私にとっても勉強になりました。若い先生たちとの懇親はとても愉快でした。

主流メディアはネットにシフト

フェイスブックでも大学講義(一部リモート)でも、ネットの便利さを痛感しています。携帯するスマホ、デスク上のパソコン、その間の使い勝手のタブレット。これら3端末を使い分けながら、各方面とコンタクトできます。いつでも、昔の仕事仲間、今の仕事仲間とつながります。以前は文字と写真の活用が主でしたが、最近、映画もネットで観るようになりました。

新聞もネット経由です。今、朝日を紙とネットで、日経とウォール・ストリート・ジャーナルをネットで購読しています。3新聞とも紙メディアの限界を感じているのか、ネット経由の発信に力が入っています。企画記事などはネットを優先、紙よりも先にネットに載せるようになりました。紙<ネットに、経営戦略をシフトしたようです。私の仕事期には想像もできなかったことです。

「そろそろ期」でも何か起きる?

私の仕事期45年のうち、4分の3は通信社、残り4分の1は地域紙でした。転職したとき、新聞業界紙の取材に「ニュースの卸売業を卒業して小売業に転じた」と答えましたが、これは理由の一つ。通信社のネット開発部門を任されたものの、その可能性に無理解な(従来の媒体モデルにこだわる)トップと衝突、情報伝達手段の先を読めない経営陣にサヨナラしたのがもう一つの理由でした。

仕事期最後の10年と引退期前半の5年を、地域紙に関われたことはハッピーでした。いろいろな分野の方と知り合えたからです。4年前、ネット媒体(本サイト)に参画できたこともハッピーでした。「そろそろ期」でも何か起きそうです。「頭は20代後半」ですから。(経済ジャーナリスト)