【コラム・塚本一也】茨城県内で乗車できる鉄道は11路線あります。古河駅から乗車できる東北線、下館駅から乗車できる真岡線、鹿島神宮駅から乗車できるJR鹿島線などもカウントしておりますが、県内を通過しているものの、乗車できない東北新幹線などは含んでおりません。これまで取り上げた路線は8路線となっており、残りが少なくなってきました。

今回は身近に存在し、歴史もあるのですが、話題として取り上げづらかった常総線について少し触れたいと思います。

常総線は取手駅から下館駅まで、関東鉄道が経営する非電化の私鉄です。営業距離は51.1キロですが、取手駅から水海道駅までの17.5キロは1984年に複線化が完了し、首都圏へ通勤客を輸送する役割も果たしています。平日の7時台は上下線とも6~7分間隔でダイヤを編成しており、取手駅ではJR常磐線、守谷駅ではTX(つくばエクスプレス)と接続しています。

常総線沿線は、東京23区の過密対策として、1970年代に入ると常総ニュータウンの開発が始まりました。当時の住宅公団による、計画人口9万人の大規模な開発です。開発当初、常総ニュータウンから東京駅へ直通電車が通るという触れ込みに引かれ、多くの方が住宅を購入したといわれています。

そのため、丸の内の大手企業に勤務するエリートサラリーマンが多く住んでいるといううわさを聞いたことがあります。しかし、およそ35年後にTXが開通したときには、そういった方々は定年を迎えていたという「ブラックジョーク」もささやかれているそうです。

常総線の路線図

非電化でも複線区間を持つローカル線

非電化でありながら複線区間を持つ営業線は全国でも珍しいですが、鉄道貨物輸送が華やかだったころには、こういった路線は結構ありました。その後、貨物輸送が衰退したために、電化に至らずにそのまま営業線として残っているようです。

その点で常総線の場合は特異であり、非電化の原因は本コラムでも以前取り上げたこともある気象庁地磁気観測所(石岡市)の影響です。東京近郊の通勤電車としての機能を期待されながら、「非電化のローカル線」というレッテルを貼られてしまう常総線は、将来構想が大変描きづらい路線と思われます。

私たちが子供のころ、県西地区の田園地帯を走る常総線は「まぼろしの常総線」と言われていました。特に2両編成で走る姿を見られたときには、何か良いことがあると言われたものでした。今、常総線は、通勤時2両編成、イベント時4両で走っています。

コロナ禍により、在宅勤務という新しいライフスタイルが注目されていますが、TXや常磐線と接続している常総線は、そのポテンシャルをどう活かしていけばいいのか、関係者のご尽力に期待したいと思います。(一級建築士)