【コラム・佐々木哲美】ナラ枯れはコナラなどの樹木が集団で枯れてしまう病気です。2020年9月初め、森林総合研究所(つくば市松の里)に勤める会員から、つくば市内の数カ所でナラ枯れと疑われる症状がコナラに発生しており、宍塚の里山でも発生していないか、注意して見てほしいと連絡がありました。

ナラ枯れの正式名称は「ブナ科樹木萎凋(いちょう)病」といい、一般には「ナラ枯れ」とか「カシノナガキクイムシ被害」と呼ばれています。「ナラ枯れ」は、ナラ類、シイ・カシ類の樹木を枯らす病原菌と、その病原菌を媒介する昆虫による「樹木の伝染病」です。病原菌は「ナラ菌」と呼ばれる糸状菌(カビ)の仲間で、媒介昆虫は体長5ミリほどの甲虫(こうちゅう)、カシノナガキクイムシです。

このキクイムシのメスの背中(前胸背)には、菌のうという臓器器官があり、この菌のうにナラ菌を入れて、被害木から健全木へ運び、被害を拡大させます。当初、本州の日本海側を中心に被害が拡大、太平洋側に広がり、2020年、茨城県内で初めて、ナラ枯れが確認されました。

10月、会員から宍塚里山のコナラが写真のナラ枯れに酷似していると報告があり、森林総研に見ていただいたところ、ナラ枯れの疑いが濃いということでした。

対処する前にナラ枯れの見分け方と対処の仕方を学ぶ必要があります。今年1月、関係者に働きかけて現地調査を開催したところ、森林総研から主任研究員の升屋勇人さんら3名、県南農林事務所1名、県技術センター1名、樹木医1名、当会3名の参加がありました。観察路に沿って里山を一周したところ、ナラ枯れは13本確認できました。

「樹木の切断」「巻いて処置」「切株処置」

その後、升屋主任研究員に現地に来ていただき、対処方法を「樹木の切断」1本、「巻いて処置」6本、「切株処置」3本、「経過観察」3本―に仕分けていただきました。

まず、「巻いて処置」に区分した樹木の対策ですが、①木の根元をスコップで少し掘る、②立木と捕獲シートの隙間を作るために、シノ竹を7~8本周囲に立てて上下2か所を縛る、③捕獲シートの粘着面を立木に向けて張る、④養生用のビニールシートを2層になるよう周囲に巻く、⑤ガムテープで固定する、⑥根元のシートに土をかぶせて固定する―の手順で行います。切株も同様にスペースを作りながら、粘着テープを巻いてビニールシートで覆います。

この作業を3回に分けて実施し、「巻いて処置」6本、「切株処置」3本を、延べ7名の参加で行いました。試行錯誤をしながら試験的に行いましたが、思いのほかうまくいきました。これでナラ枯れの被害木の処置は一応終え、経過を見ることにしました。しかし、まだ「経過観察」3本の対処と新たな松枯れの被害調査をしなければなりません。(宍塚の自然と歴史の会副理事長)