【コラム・玉置晋】「ブブブブブーン」。犬のべんぞうさんと一緒に散歩していると、レンコン畑から奇妙な音を発する未確認飛行物体と遭遇しました。僕が住む茨城県土浦市はレンコンの出荷が日本一。家の近所にも広いレンコン畑があって、初夏にはハスの葉っぱが水面から出て、白やピンクのハスの花が咲き始めています。

そんな中から聞こえてくる異様な音に、べんぞうさんは怖がって、アスファルトにお尻をペタンとつけて、歩いてくれません。すると、遠くから「歩行者あり!」と、手を挙げて注意を喚起する方がいました。その方から数十メートル離れたレンコン畑の対面には、リモコンをもって何かを操作する人がいました。

そう、「ドローン」です。大きさはおよそ1.5メートル×1.5メートルと大型機です。ドローンのお腹には肥料が搭載されていて、広大なレンコン畑に散布していたのです。

ドローンとGPSと宇宙天気

実は、僕は少し前にドローンの操縦を習いました。それでわかったことは、風があるときにドローンが流されてしまうので、安定した操縦をするのは簡単ではないということです。そこで活躍するのが、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)です。

複数の人工衛星から発せられた測位信号をドローンが受信して、自分の位置を把握します。ドローンが自分の位置を保持するように、自律的に制御してくれます。通常はこの機能をオンして作業を行います。

よって、ドローンは完全にGPSに依存した道具であるといえます。そして、GPSを脅かすのが宇宙天気の嵐の一つ、電離層の嵐です。電離層は、高度50キロ~500キロに広がる電子密度の高い領域です。ラジオで声が聞こえるのは、遠くの放送局から発せられた電波が電離層で反射して届くからです。

一方で、人工衛星から発せられたGPSの電波は、電離層で反射せずに、突き抜けて宇宙から地上に到達する特性を持っています。しかし、地球の大気循環や太陽活動により電離層の電子密度が増減することがあって、GPS電波の通りを悪くすることがあります。

そうしますと、地上のドローンは正確な位置情報がわからなくなっていまい、操縦に支障をきたす恐れがあります。ドローンの普及により、宇宙天気の重要性はより大きくなっています。(宇宙天気防災研究者)