《邑から日本を見る》8 種子法廃止の愚 食の安全より米企業優先

飯野農夫也の版画「憩い」

【コラム・先﨑千尋】この4月に「主要農作物種子法」(種子法)が廃止される。これは昨年の通常国会で政府が提案した廃止法案が可決成立したからだ。衆参両院の国会審議に費やされたのはわずか11時間半だった。

種子法は1952年に「国・都道府県が主導して、基礎食料である稲などの優良品種の生産・普及を図ること」を目的に作られた。同法により、各都道府県は、原種や原原種の生産、奨励品種の指定などを行ってきた。民間にも門戸を開いているが、地域の実態に合った息の長い品種の開発には試験場などの役割が欠かせない。本県にも農水省直轄の試験場や研究機関、県の試験場、研究所がある。

廃止の理由を農水省は、種子法が民間企業の参入障壁になっている、民間活力を活用するうえで種子法は邪魔な存在だというのだ。

実際には農家は高額な種子を買わなければならなくなることが懸念される。かつては野菜の種子は国産だったが、最近はほとんどが海外で生産され、しかも一代限りなので、農家は毎年買わなければならない仕組みになっている。

なぜ種子法が廃止に追い込まれたのか。2013年、日本がTPP交渉に参加した時、安倍晋三首相が訪米して日米並行協議が行われた。その協議で日本政府は遺伝子組み換え作物の販売で有名なモンサント社などの意向を汲み、日本の各省庁に検討させ、必要なものは規制改革推進会議に付託するというレールが敷かれ、種子法がやり玉にあげられたのだ。

種子法の廃止が推進会議のテーブルに載ったのは一昨年10月。国の審議会などを経ることなく、わずか半年という超スピードで法案が通ってしまった。

では、種子法の廃止が農家や消費者にどのような影響を及ぼすのだろうか。

昨年7月、山田正彦元農水大臣らが呼びかけ人となり、有機農家や消費者団体、農協組合長らが手を組み、「日本の種子を守る会」が発足した。守る会は種子法がなくなると、①公共財として守られてきた公共種子を守る制度がなくなる②種子が5倍から10倍の価格になってしまう③モンサントなどの米国企業に種子が独占されてしまう―などの問題点を指摘している。種子の価格が高くなれば当然農産物の価格も高くなり、自分たちはカンケイないということにはならない。

山田さんらは、日本の伝統的な稲作の原種、原原種の情報や施設の民間への提供が促進されることになり、私たちの命綱ともいえるコメが民間資本や外資に握られ、食の安全性が担保できなくなる、と訴えている。「エコノミスト」は、「種子はヘソのようなもの。普段はその存在や役割に思い至らないが、実は食物や農業の先行きを左右する要だ」(2017年11月14日号)と、警鐘を鳴らしている。(元瓜連町長)