【コラム・山口京子】「SDGs」というアルファベットをよく目にする。2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標」(Sustainable Development Goals)の略だと数年前に知った。「今のままだと人間社会は持続不可能で、どこかでクラッシュする」という危機意識が根底にあるからこそ、「持続可能な社会」の標榜(ひょうぼう)なのだろう。

SDGsは「誰1人取り残さない」「地球1個分の経済社会」の実現という理念を持ち、「世界を持続可能な、かつ強くしなやかな道筋に移行させる変革をしていくこと」が目的のようだ。17のゴールと169のターゲット、262の指標が明記されている。

17のゴールの1番目は「貧困をなくす」。2020年に広がった新型コロナ感染症によって、貧困化は国内外でより進み、一方で富裕層は利益を上げているという。世界の富がどうなっているのか、「世界の名目GDP」(出典・国際通貨基金=IMF)を調べてみた。

2020年の世界の名目GDP総額は84兆4393億USドル。1位が米国で全体の約25%、2位が中国で約17%、3位が日本で約6%。この3カ国だけで48%にも上る。1人当たりGDPは、米国は5位で6万3415USドル、中国は61位で1万0483USドル、日本は23位で4万0146USドル。ちなみに、対象国192カ国の真ん中(96番目)は南アフリカで5067USドル。

GDP総額を世界の人口約78億人で割ると、1人当たり1.1万USドル。この数字を見ると、自分は使いすぎているのか、お金がかかる生活様式を選んでいるのではないかと思わざるを得ない。

日本の資源消費は地球2.8個分

考えさせられたのは、「地球1個分の経済社会」の形はどのようになるのだろうかということ。「グローバル・フットプリント・ネットワーク」によると、世界の全人口が米国レベルの資源消費をすると、地球は約5個、日本レベルなら2.8個、東チィモールレベルでは0.3個必要という。

SDGsの本質的な課題として、「世界の資源消費の総量を減らすこと」「国際的にも国内的にも適正な分配がされること」を指摘する専門家がいる。それなしにはSDGsは実現できないとも…。

高度成長期から今まで、土に還らないものをたくさん生産、消費、廃棄してきた。「土に還らないものは生産禁止」なんていう法律はできないのかしら。これからの技術に期待するよりも、今できることを実行した方が穏やかに暮らせるのではないかしら。

自分の手で掘ったジャガイモはおいしかった。ほんの少しのジャガイモだから、できたことなのだけれど…。(消費生活アドバイザー)