【コラム・岩松珠美】梅雨の季節を迎え、一雨ごとに緑が色濃くなってきた。学校では2年生が、在宅療養する方々の日常生活を援助する訪問介護の実習に行っている。施設実習、在宅実習のどちらについても、1年前から、施設や機関と打ち合わせて準備してきた。

社会福祉の分野では、先の大戦が終わるまで宗教法人が大きな役割を果たしてきた。大戦後、社会福祉は国の責任となり、社会福祉法人が中心となり事業を展開してきた。しかし、ホームレス問題など新しい社会問題が起こってくるなか、宗教法人の「救護思想」が再び存在感を持つようになっている。

日本ソーシャルワーカー倫理綱領にあるように、社会福祉の対象は、あらゆる人間をすべてかけがえのない存在として尊重する―と考えられてきた。重症心身障害児であろうと認知症の高齢者であろうと、オンリーワンであるのと同時にオールであるという考え方である。

私は、社会福祉事業の実践には理念や価値観がなければならないと思っている。その価値観を生み出す源のひとつに、宗教が存在すると感じている。

「尚恵学園」と「土浦めぐみ教会」

土浦市内には、高齢分野・障害分野で、仏教系とキリスト教系の組織がある。ひとつは、仏教系の社会福祉法人尚恵学園さん(土浦市神立町)である。

この組織は、知的障害者を対象に幅広い社会福祉サービスを提供している。故・住田恵孝僧正が1956年に神宮寺境内に開設。現在では、知的障害者支援施設、多機能型事業所、グループホーム、パン工房などを展開している。工房のパンや菓子類は、JAの直売所や市役所内のショップで販売されている。

もうひとつは、キリスト教(プロテスタント)系の宗教法人土浦めぐみ教会さん(土浦市上高津)である。1980年代に会堂し、2003年に高齢者福祉事業、2015年に障害者福祉事業を始め、地域のニーズに応えている。

学生の実習では、急な事情で他所の受け入れが難しくなったとき、両施設が学生を引き受けてくれ、おいしいパンと気持ちも届けてくれた。学生ともども、心が満たされたことを深く感謝している。(つくばアジア福祉専門学校校長)