山口京子さん

【コラム・山口京子】コロナ禍で生活や家計が一変した人が多いのでは! 自分もその1人として感じたことを伝えたい。

昨年5月、コロナの影響で、両親が通っていたデイサービスが一時閉鎖。介護のために栃木県の実家に帰り、一緒に生活することになった。仕事の方は、初めのうちは介護休暇や有給休暇を取り、それがなくなると欠勤扱いにしてもらった。自宅と実家を往復する生活が半年。結果的に、復帰の見通しが立たずに退職した。現在、父は施設に入所、母はデイサービスに通っている。

調べてみると、全国の65歳以上の人口は3600万人を超え、要支援・要介護認定者は約670万人。働きながら介護をしている人は約350万人。介護を理由に仕事を辞める人が年間で10万人弱。国は介護と仕事の両立支援のために制度を作ったが、まだまだ周知されていない。また、使い勝手の点で課題が多いことを当事者となって分かった。

結果的に退職となった場合、例えば、50歳で年収600万円の人が介護離職した場合、その後の収入の損失は1億円近くになるだろう。辞めた後は、厚生年金ではなく国民年金加入者となり、65歳から受け取れる年金額も下がってしまう。介護が終わって再就職したいと願っても、正社員として働くことは非常に難しいのが現実だ。

人生後半の生活設計が狂う

人生後半のライフプランが大きく狂ってしまうのが、介護離職だ。介護に直面した場合、1人で悩みを抱えずに、いろいろな相談機関に出向いてほしい。勤務先にもその旨を伝え、働き続けたいという意思を示したうえで話し合ってほしい。

問題解決には、最新の情報を入手し、どんな制度を利用できるのか知ること。そして、介護される人が親であれば、親の年金や資産についても確認すること。親のお金でやりくりできるのか、どんな介護の方法があるのか―などについて、専門家を交えて決めたい。

私は現在、1人暮らしをする母の様子を見るために月3回ほど帰省する。病院通い、銀行通い、買い物、行政から届く書類の確認、農家だった家の周りの掃除、草取り、野菜作り…。春になると自然は足早に進み、忙しくなる。母に指示されて、庭の一角に作った畑を耕し、種をまく。(消費生活アドバイザー)

【やまぐち きょうこ】2020年まで、いばらきコープ生活協同組合の「くらしの電話相談ダイヤル」相談員を15年務める。また組合員を対象にした「くらしの講座」講師として、生活設計、家計管理、年金、相続、遺言、終活、保険見直しなどのセミナーを企画。現在「社会保険労務士 やまと事務所」所属。ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士、消費生活アドバイザー。1958年、栃木県生まれ。龍ケ崎市在住。