【コラム・坂本栄】本コラムも100回を迎えました。安全保障や国際経済などグローバルなことも話題にしたいのですが、つくば市政への読者の関心が強いこともあり、今回もローカルな話にします。大台入りのテーマは、五十嵐市長の政治案件(運動公園問題)はまだ迷走するのではないかという話です。

2つの成功と2つの失敗

本サイトの記事「旧総合運動公園用地の利活用調査 再スタート つくば市議会」(2月3日掲載)を読んで、「変な話だな」と思いました。五十嵐さんが「(用地の)一部は防災倉庫に活用して残りは民間に売却したい」とTVインタビューで発言。これに、議会の審議を軽視していると市議が言いだし、次の特別委員会に市長を呼び、何を考えているのか問いただすことになった、という内容です。

運動公園問題の流れは、前市長が計画(UR都市再生機構から買った用地に陸上競技場などを建設)を発表(A)→多額の建設費に反対する市民運動が活発化(B)→住民投票で建設反対が多数を占め前市長は計画を断念(C)→「運動公園問題の完全解決」を目玉公約に掲げた五十嵐市長が誕生(D)→この公約の柱「URとの返還交渉」に失敗(E)→次の手「民間業者への一括売却」案に議会が難色(F)—に要約できます。この先に、「一部を防災倉庫の活用」案が加わったことになります。

住民投票で前市長の計画を葬り(C)、その勢いに乗って市長に初当選したこと(D)は、市民活動家の五十嵐さんにとって大成功(〇〇)でした。しかし、用地をURに買い戻させる交渉は失敗(E)、その後の民間業者へ一括売却する案(F)も実現せず(✕✕)、五十嵐市政にとって運動公園問題は悩ましい政治案件になっています。

間違いはどこにあったのでしょうか? 私の見立てでは、コラム「つくば市長の看板公約を検証する」(昨年8月17日掲載)でも指摘したように、最初の市長選のときに「就任後直ちにURと(用地)返還交渉を行う」(Dの柱)と、主公約に掲げたことにありました。しかし、市との売買契約ではURが解約に応じることはあり得ず、この公約の実現可能性はほぼゼロでした。「成功誘因」の中に「失敗因子」が潜んでいたわけです。

もう1バツが増える?

話を議会の動きに戻します。先の記事(2月3日掲載)から推測するに、議会では①なぜ運動公園用地に防災倉庫を持ってくるのか②それは同用地に陸上競技場を造る選択肢を封じることになる③防災倉庫を建てる場所なら他にもある―といった意見が出るでしょう。五十嵐さんがこれらの疑問や指摘に十分答えられないと、✕印がもう一つ増えることになります。

私は、防災倉庫は廃校跡や廃庁舎跡の方が適地ではないか、運動公園用地に建てると土地の形が悪くなり(虫食い状態になり)、残った土地の売却にはマイナスではないか、と余計なことを考えています。(経済ジャーナリスト)