【コラム・先﨑千尋】新型コロナウイルス対応の特別措置法に基づく2回目の緊急事態宣言は、さらに1カ月延長されることになった。初めてプロンプターを使っての記者会見の菅総理の姿は痛々しく映り、この人の体は、失礼ながらあと1カ月もつのかなと思ってテレビを見ていた。

1月の発令の時に1カ月で収束させると見えを切り、「私からの挨拶とさせていただきます」と結婚式の挨拶のように締めくくったことや、「1カ月過ぎて再延長もあるのか」という記者からの質問に「仮定のことについては私からは控えさせていただきたい」と答えたことに、私は、これは何だと思った。組織のトップは常に最悪の事態を想定し、その時どう対応するのかを部下に示さなければならない。その心構えがない社長がいたら即刻クビだ。首長も同じだ。

2月3日の東京新聞の「本音のコラム」欄に文芸評論家の齋藤美奈子さんが、「数のマジック」というタイトルで、東京都のコロナウイルス感染者が減り始めていることについて書いている。それによると、東京都や神奈川県は1月下旬に「積極的疫学調査の規模を縮小する」という通知を保健所に出した。積極的疫学調査とは、陽性者からの聞き取りで濃厚接触者を追跡する調査のことだそうだ。

要するに検査人数を減らすことだ。検査の母数が少なくなれば陽性者の数も減る。最近の夕方のニュースで東京都の陽性者がどうしてこんなに減ってきたのか疑問だったが、その謎が解けた。茨城県の発表でも検査総数(母数)を出していない。だから、陽性者の数の変化だけでは、本当にコロナに感染した人が減ってきたのかどうかはわからない仕組みになっている。おかしいではないか。

死者数が増えていたり、病院などに入れない調整中の人がかなりいることも伝えられており、現場からはすでに医療崩壊が起きているという悲鳴が聞こえてくる。

国民は菅内閣に愛想をつかした?

そうしたとき、与党幹部が銀座のキャバクラとかで規制された時間を大幅に超えて遊び、しかもウソをついていたことが暴かれた。首相自らも、暮れに二階自民党幹事長らと会食したことで頭を下げている。メディアの世論調査では内閣支持率が30%台に落ち込んでいることや、東京都千代田区長選、北九州市議選、鹿児島県西之表市長選などで与党が敗北した結果を見ると、国民が菅内閣に愛想をつかしたのでは、と受け取れる。

4日には、森喜朗東京オリ・パラ組織委員会会長が女性蔑視の発言をしたとか、菅総理の長男らが総務省の幹部を接待したとかのニュースが大きく伝えられている。「菅総理は首相、社長の器ではなく、せいぜい総務部長どまり。間違って首相になってしまったのは国民にとって悲劇」という週刊誌の報道もあるくらいだ。政府与党の危機管理ができていなければ内閣は滅びるしかない。だが、菅内閣が滅びただけではコロナ問題の解決にならないのだ。

ワクチンの接種も大事だが、特効薬ではない。その前に感染源対策。感染者を早く見つけ、隔離、治療すること。中国武漢のように、コロナ専門病院をつくり、そこに患者を集中させること。医療現場でやるべきことは、素人目にもたくさんありそうだ。(元瓜連町長)