【コラム・坂本栄】つくば市が抱える2大プロジェクトの方向性が見えてきました。一つはどんな陸上競技場をどこに造るか、もう一つはTXつくば駅そばのつくばセンタービルをどうリニューアルするか、です。市当局は今春に最終案を決めたいようですが、県南を代表する市の計画としてはどちらも地味な感じがします。今回はこれらの内容を吟味しましょう。

地味な陸上競技場建設プラン

市が固めた陸上競技場案は、主に小中学生が利用することを想定する「第4種公認(第3種相当整備)」です。規格の表現ではイメージが湧きませんが、要は1周400メートルの全天候型8走路のトラックを造るというプランです。観客スタンドはメインが1500席、芝生が2500人分、駐車場は普通車400~500台だそうですから、市内の陸上競技会などには手ごろなサイズでしょう。

そこで県内の他施設はどうなっているのか調べました。茨城県営(ひたちなか市、笠松運動公園内)は第1種で2700台分の駐車場があります。水戸市営は第2種、石岡市営、日立市営、龍ケ崎市営は第3種だそうです。私が小学生の時に運動会をやり、市内5中学対抗(私は砲丸投げの代表!)を開いた土浦市営が第4種です。いろいろな意味で勢いのある学園都市つくばの陸上競技場が第4種では、少し地味ではないでしょうか。

ある県議とこの問題について話したことがあります。彼の構想は、県に掛け合って高規格(第1~2種)の県営競技場をつくば市内に造らせ、県南の各市にも建設費を分担してもらったらどうか、というものでした。つくば市という狭い世界に閉じこもるのではなく、より広い視野で考えれば、市の費用負担も少なくて済むというアイデアです。

どこに造るかについては、県立上郷高校跡地(7ヘクタール)と総合運動公園予定地跡(45ヘクタール)が候補に挙げられています。比較評価一覧に目を通すと、市はどうやら前者に誘導したいようです。アクセス路の利便性や拡張の可能性などは明らかに後者が上ですから、この選択には何か引っかかるものがあります。

制約が多いセンタービル改修

市の中心市街地とつくばセンタービルをどうするか、市は苦悩しているようです。議会向け資料では、①ビルはホテル日航つくばと筑波都市整備との区分所有であり市が勝手にいじれない、②著名な磯崎新氏が設計したビルのデザインはできるだけ変えない方がよい、③飲食店街があった1階は道路側から目立たないという建築構造上の制約がある―と難しさを列挙、リニューアルは「市が所有している専有部分のみ」と、こちらも地味になりそうです。

具体的には、市が筆頭株主になる「地域運営会社」を設立し、センタービルを市民向けサービスと小ビジネス支援に使ってもらうというのが市の最終案です。私は本コラム87(昨年8月3日掲載)で、上記①②③などの問題点を踏まえ、区分所有権をまとめて大手開発会社に売り払い、オフィス中心のビジネスゾーンに造り変えてもらったらと提案しました。運営会社でにぎわいが戻らなかったら検討してみてください。(経済ジャーナリスト)