【コラム・及川ひろみ】宍塚には不思議な広場がある。雑草がなぎ倒され、ぽっかりと空いた広さ20畳ほどの広場。谷津のくぼ地で、日当たりがよく、周囲は背の高い雑草に覆われ、人が近寄った形跡は全くない。しかも、謎の広場は展望台と呼ばれる高台から丸見え。何のための広場なのか不思議でならなかった。

謎の広場

1月3日の午後3時過ぎ、1匹の丸々と太ったタヌキが広場の隅で寝入る姿があった。日が落ち、寒くなってきたなと思った4時少し前、眠っていたタヌキがやおら起き上がり、広場の縁を歩き始めた。間もなく、草むらから呼び出されたかのように、もう1匹のタヌキが現れた。2匹はしばらくじゃれ合っていた。その後、1匹が近くの穴に入ると、残された1匹も同じ穴に勢いよく飛び込み姿を消した。

2匹は同じような大きさ。番(つがい)のようだ。それにしてもこんな広場、どうやって作ったのだろうか。展望台は五斗蒔谷津(ごとまきやつ)と呼ばれる宍塚大池の南側の先端にあり、散策路から少し入ったところ。ここは谷津が広く見下ろせる見晴らし抜群なことから、野鳥観察のポイント。これまで何度となく訪れた所だが、これまで広場が作られたことはなかった。

それにしても、この広場は日当たりがよく、北側は小高く、北風が遮られ、昼寝には気持ちよさそうなところ。宍塚にはタヌキの成獣を襲う動物がいないからか、その無防備さにちょっと驚く。この時期のタヌキは、疥癬(かいせん、皮膚病)に侵され、やせ細るものも多いが、今回見た2匹のタヌキはとも丸々と太り、色つやもよく元気そうだった。

アライグマ、ハクビシン、キツネもいる

先日、水鳥のオオバンの羽根が、池の縁に散らばっていた。明らかに鷹に襲われ、羽根をむしり取られたものだった。しかし1羽分にしては量が少な過ぎる。さらに進むと、続いて見たのはオオバンが哺乳動物に食われた跡だった。骨には新鮮な血液が付着し、その日の朝の惨劇のようであった。

池からオオバンを引き上げた痕跡が池の縁の草むらにあったことから、池にいたオオバンを鷹が仕留め、陸に引き上げて羽根をむしっているところを、哺乳動物が力ずくで取り上げたようだ。

宍塚の里山には方々に獣道がある。散策路の両側に動物が出入りする草のトンネルが方々で見られる。小川の魚やザリガニを捕らえるためか、小川に上り下りする獣道もみられる。夜になると、4つ足の動物が里山を闊歩(かっぽ)しているに違いない。そんな痕跡を探して散策するのも楽しい。

タヌキのほか、宍塚で見られる中型哺乳類は、アライグマ、ハクビシン、時々キツネがいる。(宍塚の自然と歴史の会 前会長)