【コラム・田口哲郎】

前略

テレビニュースのローカル天気予報では、茨城県の地図が表示され、各エリアにお天気マークがつけられます。その地図を見るたびに思うのです。霞ケ浦の形は鳥のカモに似ているな、と。カモが上を向いて、羽を前に広げているように見えるのです。そう見えると思い込むと、そうにしか見えなくなります。だまし絵と同じ理屈です。

それにしても、茨城県の地図における霞ケ浦の存在感はなかなかのものです。それもそのはず、ご存知の通り、霞ケ浦は琵琶湖に次ぐ面積を持つ、日本第2位の湖なのですから。沿岸自治体は茨城県12の市町村のみならず、千葉県香取市も含まれるのですから、その広さが分かります。

私は幼少期、大阪府に住んでいたことがありますが、琵琶湖の存在感は確固たるものでした。幼稚園のお泊り旅行の際は琵琶湖畔のホテルに泊まり、琵琶湖のすごさを教え込まれました。強風からの荒い波に、なぜか大きなカボチャがもまれていた光景だけが記憶に残っています。

それはともかく、関西の子どもは滋賀の名を覚える前に琵琶湖を覚えるのです。京都大学の前身、旧制三高の寮歌は「琵琶湖周航の歌」です。関西の子どもは立派な青年に成長したら、琵琶湖の美しさを朗々と歌うのです。

その名は「カスミガウラニカモン!」

さて、われらが霞ケ浦はどうでしょうか。残念ながら、琵琶湖ほどの存在感を発揮しているとは思えません。琵琶湖の次に大きいすごい湖が身近にあるというのに。それを喧伝(けんでん)しないのは、茨城ジャン(パリジャンもじり)のつつましさというものでしょうか。

琵琶湖は島の真ん中にあってザ・湖という感じですが、霞ケ浦は島の極東ゆえに海に近く、入り江っぽさがあり、さらに北浦も近くにあるので、湖崩れみたいな印象を与えるからでしょうか。カモっぽい霞ケ浦を見るたびにため息が漏れます。霞ケ浦をもっとアピールできたら…。

そこで「勝手に地域振興協力欲」がふたたび湧いてきます。霞ケ浦のカモっぽさをゆるキャラにしてみたらどうだろう。「ひたちのうしか」(遊民通信8参照)に懲りず、新たなカワイイに出会いたい…。その結果生まれたのが「カスミガウラニカモン!」です。

ここで、カモン!くんを紹介したいと思います。

▽名前:カスミガウラニカモン!

▽生年:721年(『常陸国風土記』成立年)

▽行きたい場所:琵琶湖

▽好きな食べ物:ワカサギ

▽趣味:帆引き船に乗ること

▽親友:つちまるさん、ひたちのうしかさん

▽ひと言:霞ケ浦はすごい湖なんだよ!

新参者のあんたに言われなくても、霞ケ浦のすごさは分かってるんだよと言われそうですが、ご容赦ください。古代ギリシアの神々を生んだような地元愛がカスミガウラニカモン!を生みました。その真情は偽りなきものです。これからは地元復興の時代ですし、もっと霞ケ浦の魅力を知っていきたいです。ごきげんよう。

草々(散歩好きの文明批評家)