【コラム・及川ひろみ】12月上旬、遅い紅葉のときを経た里山。今ではだいぶ木々の葉が散り(厳しい寒さを迎えてもまだ落ちない葉も結構あります)、林がだいぶ明るくなってきました。木々を飛び交う、シジュウカラ、エナガ、ヒガラ、メジロなど小鳥たちの群れ。寒さで里に降りてきたのか、見られる種類が最近グンと増え、観察が楽しみです。

この時期、雑木林をめぐると、乾いた落ち葉が足元でガサガサ音を立て、12月ならではの里山の音が響きます。この枯れ葉の音、今が最高。しばらくすると木の葉が湿り、今のような軽やかな音は鳴りを潜めます。

さて、里山が冬の装いを迎えるころになると、ガマズミやイイギリ、マンリョウ(万両)、シロダモなどの赤い木の実が目立つようになります。ガマズミは霜にあたると実が柔らかくなり、同時に酸味も熟し柔らかな味に変わります。

林でこの実を見つけると、つい口に含んでしまいます。いつでも、酸味は人を元気づけてくれますが、ガマズミも楽しみの一つです。酢大根を漬けるとき、この時期のガマズミを混ぜ込むと、大根が美しい紅色に染まり、これも初冬のお楽しみです。

鳥は植物にとって種子散布の道具

さまざま見られる赤い実の中で、今の時期の代表格はマンリョウ。雑木林や暗い杉林にも明るい赤が目立ちます。発芽後3年目ごろから実をつけ、年々成長し1メートルほどの高さに育ちますが、ヒョロッとした木の上部に葉と実を付ける独特なスタイル。

門松などの正月飾りによく使われるセンリョウ(千両)は、茨城ではもっぱら庭木。残念ながら自生していません。関東の南部、西日本、九州が自生地です。

カラタチバナ(百両)は、茨城県の宍塚でも見られます。ヤブコウジ(十両)は、林床に群生する高さ10センチほどの植物で、真っ赤な実を1個、ときに数個付けます。これらの植物はどれもサクラソウ科、実はどれも1センチほどの大きさ。

植物が赤い実を付けるのは、鳥に見つけてもらうためです。鳥は植物にとって種子散布の道具。動くことができない植物は、種子を遠くに運ぶために、誰かの力を借りなければなりません。赤い実は鳥をおびき寄せ、歯を持たない鳥は実を丸のみ、消化できない種子をふんと一緒に出します。結果、鳥によって種を遠くに運ばせるのです。

しかも、赤色は昆虫には見ることができない色。昆虫の食害からも逃れ、生き物同士の巧みな、絶妙な関係にある赤い実です。(宍塚の自然と歴史の会 元会長)