【コラム・及川ひろみ】ドングリの季節を迎えました。宍塚で一番多いのがコナラドングリ。次いで、アラカシドングリ、クヌギドングリ、シラカシドングリ。わずかですが、スダジイドングリも拾えます。

ドングリが落ちたところをよく見ると、気が早いものでは皮が割れ、地中に根を伸ばし始めているものがあります。ドングリは乾くと発芽率が極端に落ちますが、落下後、適当な水分があると間もなく発芽します。

しかし、多くのドングリが見られるというのに、育った若木を見ることがほとんどありません。乾燥で発芽しないドングリが多く、発芽しても、光量不足でコナラやクヌギは成長できないのです。

そこで、放置した里山では、これらの若木の更新がほとんど起こりません。シラカシやアラカシなどカシの仲間は暗い林でも発芽・成長しますから、幼木が見られますが、雑木林はコナラやクヌギ、カシ類の大きな木に覆われ、薄暗い林になっています。

明るい森づくりを目指している林、伐採が進んだ竹林など、会が活動する場所では、コナラやクヌギの若木が見られます。

ドングリの散布はほとんどが風によりますが、実は動物によっても行われています。植物は自ら動き回ることができませんが、風や動物を利用し、種子散布を行います。ドングリは大き過ぎて、風による遠方への散布は期待できませんが、実は鳥によってかなり遠くに運ばれます。

鳥の脳は意外と発達している

この季節、里山にはギャーギャーと鳴く鳥、カケスが多く見られますが、林の樹冠すれすれ、低空飛行をするカケスをよく見ると、くちばしにドングリをくわえています。冬季、餌が少ない時期に掘り返し食べるために、この季節せっせとドングリを運び、雑木林に埋めます。カケスが林に滑り込む姿には、そんな理由があるのです。

冬季、これを掘り返し食べますが、雑木林のどこに埋めたのか、よく覚えているものだと感心します。鳥の脳は思いのほか発達していることが、最近の研究で明らかになっています。

カケスが口にくわえるドングリ、一個のように見えますが、口からのどにかけて数個のドングリが入っていて、効率よく運びます。それでも、春までにすべてを掘り出すわけではなく、掘り残すドングリもあり、それが発芽します。そこで、カケスが森をつくると言われています。

これらの樹木は、春、花を咲かせ、コナラ、シラカシ、アラカシはその年の秋にドングリが実りますが、クヌギは翌年の秋、ようやくドングリになります。(NPO法人宍塚の自然と歴史の会 元代表)