【コラム・浦本弘海】

「先生、こ、この手紙を見てください」

「なんだね、ピップ君」

「ぼくはピップ君じゃありませんし、先生もジョー・ガージャリーってガラじゃないでしょ!」

「ところで、手紙って?」

「そ、それがどうも先生の伯父さんがお亡くなりになったようで、先生が法定相続人になったそうです」

「はて、ぼくに最近亡くなった伯父はいないぞ」

「で、でもほら」

「うーん、誰だ?」

「誰だっていいじゃないですか。遺産が手に入るチャンスですよ」

「フッ、どうせ負の遺産なんだろ、オチがみえみえだよ。こいつは相続放棄だな」

今回のテーマは遠い親戚が亡くなって、なぜか法定相続人になってしまった場合の対処法です。少子化が進み、見ず知らずの親戚の法定相続人になる方が増えてきました。

しかも、被相続人(=亡くなられた方)のお子さんなどが相続放棄をした結果、繰り上がり(?)で法定相続人になるケースも見られます。

相続財産がプラスならまだしも、法定相続人として被相続人の借金を請求されることも。そこで今回は相続放棄について取り上げます。

相続放棄は慎重に

相続放棄の手続きは比較的簡単です。相続放棄の申述書という書類を書いて(書式、記載例はネットで入手できます)、添付書類(被相続人の住民票除票、放棄する者の戸籍謄本など)を付け、家庭裁判所に申し立てれば完了です。

申し立て先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で、費用は収入印紙800円と連絡用の郵便切手くらいです。

また、相続放棄が家庭裁判所に受理されたことを証する書面として、相続放棄受理証明書があります(150円)。

相続放棄の一番の注意点は、相続放棄ができるのは原則として相続の開始があったことを知ったときから3カ月以内ということです(民法915条1項)。あまり悠長に構えていると相続放棄ができなくなってしまいますので、特にご留意ください。

ちなみに相続財産を使ってしまうと、原則として相続を承認したことになります(民法921条)。

「ふーっ、早々に相続放棄をしたからよかったものの、危うく会ったこともない伯父の借金を背負うところだった」

「でも先生、この方、かなりの資産家らしいですよ」

「な、なにー」

こういうケースもありますので、相続放棄は慎重に。(弁護士)