【コラム・浅井和幸】私は常日ごろから、コミュニケーションが大事と伝えています。日常の人間関係でも何かの支援でも、相互の気持ちを伝達し合うこと、感じ取ろうとすることが大切と考えています。

事実と推測を一緒くたにして過ごしていることは多いものです。あの人は私を嫌っているとか、私の気持ちを相手は酌(く)んで動くべきだ、という思い込みで日常生活を送りがちです。また支援にしても、良い支援と悪い支援、良い言葉かけと悪い言葉かけに分けて決めつけ、相手がどのように感じているかは二の次、三の次になしてしまうこともしばしば、というより、思い込みで動いていることの方が多いのです。

それは人間同士だけでなく、猫と人間でも同じです。浅井家だけに通じる言葉、「みー触り」「らえる触り」「とまと触り」というものがあります。「みー」「らえる」「とまと」は、浅井家にいる(いた)歴代の猫です。

さば白柄のオス猫「みー」。甘えん坊で、いつも人間にベタベタとくっついてきます。遠くにいても呼べば寄ってくるし、玄関まで人間を出迎えたりします。この猫は、ガシガシ強めに撫(な)でたり、軽く肩叩きをするかのように叩くととても喜びます。この撫で方を「みー触り」と呼んでいます。

猫の気持ちと距離を測りながら

「みー」よりも、一回り大きなスモーク柄のメス猫「らえる」。洗濯機や机の上に乗ると、体当たりをするように甘えてきます。しかし、普段は遠巻きにこちらを見ていました。それだけ強く当たってくるのであれば、やっぱり「みー触り」が良いだろうと思って触ろうとすると、逃げていきます。

いわゆる普通の猫に対する撫で方でも、体を震わせるようにして逃げていきました。ある時、「らえる」と名前を呼びながら、体毛に触るかどうかの優しく触ってみると、逃げることが少なくなりました。

今まで普通だと思って触っていたやり方では、「らえる」にとっては強すぎて嫌だったのです。ある団体に保護されていた「らえる」。過去に、ちょっと嫌な経験もあったのでしょう。若干の人間に対する不信感があったのではないかと思います。この「らえる触り」を繰り返すうちに距離が縮まり、コツはありますが、今ではもう少し強めに触っても逃げなくなりました。

それ以外に、三毛猫(もちろんメス)の「とまと」。ある程度、どのような触り方でも喜ぶのですが、手のひらを押し当てるようにして、ゆっくり震わせるようにすると、落ち着いて寝転がります。これが「とまと触り」。

ある農場に、乳離れするかしないかのうちに捨てられていた「とまと」。カラスに襲われていたところを、その農場主に保護されました。もしかしたら、もっと恐ろしい体験もしていたかもしれません。きっと、大きな面積で触れられることで安心感があったのでしょう。

もちろんこれらは、様々な試行錯誤、猫の反応を見ながら接しているうちに見つけた方法です。少しずつ猫の気持ちと距離を測りながら。(精神保健福祉士)